第74話 いちゃいちゃしよう
9月に入ったものの、外はまだまだ暑いある朝。俺は、PCでちょっとした調べ物をしていた。
ミユはベッドでまだ熟睡中だ。起こさないように、静かに調べ物をする。
「"カップル いちゃいちゃ"と」
ミユがこれを見ていたら、何事かと思うかもしれない。そもそも、傍目に見ると、俺達は十分いちゃいちゃしているように見えるようだし。
ただ、最近、俺はちょっとした危惧を抱いていた。ミユといい雰囲気になると、こないだまではミユが、最近は俺がつい手を出してエッチな流れになってしまっている。それはそれで楽しいし気持ちいいが、付き合う前はもっとナチュラルにいちゃいちゃ出来ていた気がする。
というわけで、"いちゃいちゃ"なのだ。それに、エッチをするよりも、ミユを思う存分恥ずかしがらせて、愛でたいという気持ちもある。それに、ただなんとなく触れ合って癒やされる時間も欲しい。
そういうわけで、「カップルでいちゃいちゃする方法」で出て来たアドバイスを色々読んでいる次第だ。デートをする、キスをする、ハグをする、など定番の方法が色々出てくるが、キスをするのは、流れ的についエッチな方向に行ってしまいそうなので要注意だ。ハグはちょうどいいかもしれない。一緒にお風呂に入る……これは家だとちょっと無理だ。
「あれ、リュウ君。珍しく早いね。どうしたの?」
ビク。反射的に声の方向を振り向くと、寝ぼけ眼のミユが夏用パジャマを着て起き出して来ていた。
「あ、ちょっと調べものをな」
「なになに?」
無邪気に俺のディスプレイを覗き込んでくるミユ。ああ。一番見られてはいけない奴に見られてしまった。
「カップルとイチャイチャする方法……?」
「いやさ、エッチとかじゃなくて、普通にただイチャイチャするのってどうすればいいのかなーと」
言っている内に、どんどん声が小さくなっていく。
「そ、そんなにイチャイチャしたかったんだ……」
ミユもなんだか恥ずかしそうに、うつむいている。ああ、こうなればヤケだ。
「で、これからいちゃいちゃしてみるのはどうだ?」
「う、うん。いいけど。どうすればいいのかな?」
「えーと、こんな感じで」
とミユの背中に腕を回して抱き締める。寝起きの体温が伝わってきて、なんだか気持ちいい。
「ん。こういうのもたまにはいいね」
「俺もそう思った」
抱きしめながら、背中をなでたり、髪をなでたりして肌の感触を楽しむ。
「んっ」
「ど、どうした?」
「気にしないで。えと、ちょっと感じちゃっただけだから」
「そ、そうか」
今度は、ミユの首元にキスをしてみる。
「ひゃっ。ちょっと、これはエッチだよう」
「それはごめん」
ついやってしまったが、たしかに、エッチの前にやることかもしれない。ということを考えていると、ギュッとミユに抱きしめられた感触が伝わってくる。
抱き締めるのと、抱きしめられるのはまた違った感触があって、抱きしめられると、なんだか愛されているという気分になる。
ぴちゅ。首元に湿り気を感じる。見ると、ミユが俺の首元にキスをしていた。
「おま。さっき、それはエッチだって言ったばかりじゃん」
「だって、私もいちゃいちゃって言ってもよくわかないもん」
イチャイチャは意外に難しい。と、ふと、付き合う前によくしていた「いちゃいちゃ」を思い出した。
「そうだ。膝枕。ほら」
ぽんぽん、と俺の膝を叩く。
「う、うん。お邪魔します……」
ぎこちない動きで、俺のひざを枕にするミユ。
「どうだ?」
「なんだか、ちょっと落ち着かない。雰囲気の問題かな」
いつもの膝枕はお気に召さなかったようだ。
ちょっと趣向を変えて、俺がミユの後ろからハグしてみることにする。前からハグするのとは、また違って感じがする。特に、ミユの女性としての香りがするのが違う。
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいんだけど」
「もうちょっとだけ」
「わかった。もうちょっとだけだからね」
しばし、後ろからハグを続けながら、ふわふわな髪をなでていく。
「あ、これ、気持ちいいかも」
こっちはお気に召したようだ。調子に乗って、すべすべの頬をなでたり、胸を揉んだりしてみる。
「だから、それはエッチだってば」
「そ、それはすまん」
普段なら別にOKなのだが、今日の趣旨はイチャイチャなのだ。
「今度は、私から……」
後ろから、ミユが手を回して抱きついてくる。少し落ち着かないけど、吐息も感じられる距離はなかなか心地よい。
と思ったら、ぐっと圧力が肩にかかった。
「どう、気持ちいい?」
「気持ちいいけどさ。ちょっと違わない?」
「そうかなあ」
その後も、手足をなでてみたり、色々スキンシップを試みたのだけど、エッチにならない範囲でイチャイチャするのは意外と難しいことがわかったのだった。
「それで、なんで急にイチャイチャ?」
ミユが尋ねてくる。
「いや、付き合う前とか、もっとナチュラルにイチャイチャしてた気がして」
「今も十分イチャイチャしてると思うけどね」
「でも、いい雰囲気になると、すぐエッチな方向になるだろ?」
「それは、恥ずかしいけど、私は求めてくれるの嬉しいんだけど」
頬を赤らめて、求めて欲しいと言われるのはとても男心をくすぐる。
「なら、気にしないでいいか」
「そうそう。でも、ハグは気持ちいから、もっとしたい」
どうやら、俺の幼馴染は特にハグが気に入ったらしい。というわけで、俺達がイチャイチャする時にはハグをすること、という項目が加わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます