第46話 俺の幼馴染が悪ノリしている件について
プールに行った2日後の夜のこと。
「というわけで。
いつになくノリノリのミユ。今は、俺の部屋にノートPCをミユが持ち込んで、都を交えてビデオ会議をしている。発端は、ミユが、
「せっかくだから、俊先輩との進展、色々都ちゃんに聞いちゃおうよー」
などと言い出したのが発端だ。さすがに、悪ノリし過ぎかとも思ったが、「くっつく前ならともかく、今はそんなに遠慮しないでいいんじゃない?」という言葉に押されてしまった。
「え、ええと。話さないといけませんか?」
モニターの向こうの都は微妙そうな表情だ。あんまり聞かれたい類の話じゃないよな。
「都、無理しないでいいぞ。こいつが悪ノリしてるだけだから」
「そこ、水差さない!」
「はいはい」
「でもさ。都ちゃんも実は話してみたいとか思ってない?思ってない?」
煽るミユ。こいつにしては珍しい程のテンションなのだが、縁結びに協力したミユとしては色々知りたくてたまらないんだろう。本気で都が嫌そうなら、止めよう。そう決心した。
「実は、少し話したいことはあったりします」
少し恥ずかしそうに目を伏せる都。お風呂上がりで少し湿り気が残るパジャマ姿のせいか、そんな表情も妙に色っぽい。そんな事を考えていると。
「ねえ、リュウ君。都ちゃんの事、やらしい視線で見てない?」
「そ、そんなことはないぞ」
やらしい視線で見ていたわけではないが、色っぽいと思ったのは事実なので、バツが悪い。
「ふーん。まあ、いいけど」
なおも疑わしげだったが、それ以上ミユは追求してこなかった。
「で、本題に戻ろうぜ、本題」
「まず聞きたいのは、あの夜のことだね」
「あの夜って
「そうそう。結局、あの夜はお泊りしたのかなーって」
「ミユ、直球過ぎだろ」
ど直球で答えにくそうな質問を投げやがるミユ。そういえば、この事で賭けをしていたのを思い出したが、もうちょっと場の雰囲気を考えて欲しい。などと思っていたのだが、
「は、はい。恋人になったその日になんて、ふしだらかなと思ったのですけど」
誤魔化さずに素直に答えてしまう都。相変わらず恥ずかしそうだが、嬉しそうでもある。しかし、ふしだらっって、めったに聞かない言葉だよな。
「おお!やっぱり俊先輩も男だったんだねー」
「お前もたいがい失礼な事を言うよな……」
「でも、これで賭けは私の勝ちだね」
うっしっしと、何かを企んでいるような目で俺を見てくる。負けは負けだが、一体何を要求してくるのやら。新しいプレイを試したいとかそんな趣向じゃなかろうな。
「賭け?」
「こっちの話だから、気にしないで」
それより、と続けるミユ。
「都ちゃんも誘いに乗っちゃったんだね。ちょっと意外」
「意外、でしょうか?私の方からお誘いしたんですが……」
ピンと来ないという表情の都。それはいいんだけど、
「えええ?まさか、都ちゃんから?意外過ぎるよー」
「俺もびっくりだ。お前、もうちょっと堅い感じだったろ」
ずっと積極的だった都だが、昔のこいつの恋愛観は堅いというのがふさわしかった。中学の頃、そういう話題になった事があるのだが、まず交流を重ねて、告白してお付き合いを始めて、それからさらに仲を深めて初キスをして、みたいな感じだったはず。それがまさか、一足飛びにお泊りに行くとは。
「だって。どうしても、俊と離れたくないと思ってしまったんですよ」
顔を相変わらず真っ赤にしながら、それでも質問に素直に答えてしまう都。恋に恋しているというか、なんというか。
「都ちゃん、乙女だよ、乙女。それに、もう呼び捨て?」
「だって、俊がそう言って欲しいって……」
聞いているこっちがだんだん恥ずかしくなってくるな。しかし、告白の場面で、俊さんが確かにそんなことを言っていたのを思い出す。
しかし、そうなると気になるのはー
「ということは、もう初体験も済ませた?どんなだった?」
「だからミユ、直球過ぎ。内容まで聞くな。あと、それ以前にキスだろ」
俺もそこは気になっていたんだが。
「お泊りしておいて、キスもしてないは、さすがにあり得ないって」
「物事には順番ってのがあるだろ」
「そういう所、都ちゃんとリュウ君、ちょっと似てるよね」
似てる、ねえ。今のこいつがはっちゃけてるだけだと思うが。
「は、はい。少し怖かったですけど、優しくしてくれましたから……」
なんてことを、また正直につぶやいてしまう都。もう、恥ずかしいを通り越して、その夜の事を思い出しながら語っているようで、いい加減止めないとヤバイ気がする。
「俊先輩、紳士だー。それで、初体験の感想は?」
「いい加減やめい」
ミユの頭をはたく。都も洗いざらい話してしまいそうで、これ以上聞いていられない。
「ちょっと、痛いんだけど」
「それくらいにしとけ。つうか、俺が聞いてられない」
「リュウ君、私ともう何度もエッチしてるよね?」
「それとこれとは別問題。
「私は、仲のいい友達と猥談するのが憧れだったんだけど」
「じゃあ、後は2人でやってくれ」
「むー。じゃあ、そうするね。都ちゃん、2人で話そ」
「は、はい」
「都。そろそろ冷静になった方がいいぞ」
「そこ、余計なことを吹き込まない」
というわけで、ミユはノートPCを片手に、どたどたと俺の部屋を出ていったのだった。
1人取り残された俺はといえば。
「ふう、助かった」
とほっと一息。具体的な行為のあれこれを話されたら、俺が耐えられなかっただろう。というか、興味を持った都が俺達のあれこれを聞いて来そうで怖い。って、あれ?
「もしかして、まずったんじゃ……」
あの勢いで猥談を始めたら、ミユも俺とのあれこれを語ってしまいそうな気がする。しかし、後悔しても後の祭り。
(ミユがあんまり赤裸々に語っていませんように)
と天に祈ったのだった。
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