第18話 告白

 その夜。話があるということで、ミユの部屋を訪問した俺。


「それで、話って?」


 ミユもこころなしか緊張気味だ。ま、俺がこれだけ緊張してたら雰囲気も伝わるか。


「さっきさ、誠司から電話があったんだ」

「せ、誠司君?」


 予想もしない名前にびっくりのミユ。俺もびっくりだったよ。


「それで、なんて?」

「謝りたいって。勢いで言ったことで、ずっと後悔してたみたいだ」

「うん」

「もう一つ。ひどいことを言ってしまったが、好きだったのは本心だったってさ」

「そっか……ひょっとしたらそうなのかなって思ってた」

「昔みたいには遊べないだろうけど。あいつなりに思うところはあったんだなって」

「そうだね」


 少し、しんみりしてしまう。


「それで、こっからが本題なんだが」

「……」


 どう言おうか。


「さっきの誠司の話だけどさ。あいつを振ったのは、俺が好きだったからだったんだろ?」

「聞いたの?」

「ああ。でな。あんな事があったのは、俺の気持ちが中途半端だったからかもなって思ったんだ」

「それは関係ないよ!別に自分を責めることなんてない!」

「責めてるんじゃなくて。ここらで、俺も気持ちをはっきりさせとこうかなって」


 固唾を呑んで、次の言葉を待つミユ。何を伝えたいかは、なんとなくわかってるだろうな。


「ミユのことが好きだ。俺にだけ甘えてくれるところも、ちょと変なとこも、努力家なとこも」


 手を出す直前まで行っておいて、自嘲してしまう。


「だから、その、付き合って欲しい」


 さて、どんな反応が来るか。


「だいぶ待たされたんだけどな。それだけ?」


 ビミョーそうな表情で睨まれる。


「いや、いい言葉が思いつかなくてすまん」

「冗談だよ、冗談。私も、リュウ君の事が好き。だから、付き合おっか」

「ああ」


 あれ。話が終わってしまった。


「なんか、もっと劇的な反応が来ると思ってた」

「こないだみたいなことしといて、今更だと思うよ」

「そ、そうだな」 


 考えてみれば、あれで気持ちが伝わってないって方がどうかしてるか。


「あ、でも」


 ぽんと手を叩くミユ。


「キスはまだしてないから。しよ?」


 んー、と唇を突き出してキスをせがまれる。しかし、緊張するな。


 そして、俺たちは、ゆっくりと唇を重ね合わせたのだった。


「キス、気持ちいいね」


 うっとりとした表情のミユ。


「ああ」

「このまま、エッチする?」

「いや、いきなりはちょっと。すまん」

「こないだもそうだったから、いいけど」


 不満そうな声。こういうのは女性の方が度胸があるものなのだろうか。


「でも、これからは遠慮しないからね?」


 満面の笑みで俺の彼女はそう言ったのだった。

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