第3話 幼馴染がサークル活動に興味を持った件について
4月20日金曜日。
今はプログラミング入門の演習中だ。
さっと課題を終わらせた俺はツイッターでなんとなくトレンドを眺める。
大学の授業は基本的に固定席ではない。
けど、ミユはいつも俺の隣の席に座っている。
気になって、右隣のミユのディスプレイを覗き込んでみる。
見えた光景はまたしても想像を絶するものだった。
こいつは、シューティングゲームを作って遊んでいたのだった。
【そのシューティングゲーム、いつ作ったんだ?】
【ネットで、「最小の行数でシューティングゲームを作る」っての見たんだよ】
【あーうん。わかった】
なんで即席で真似できるんだか。そんなことを心の中でぼやいていた。
前回の毒舌を聞いていたのか、あれ以来、ミユに声をかけてくる男子はいない。
噂が広まったのか、女子も。
◇◆◇◆
昼食の時間になった。
計算機学部棟には学食があって、1食300円でお腹が満たせる。
「そろそろ、なんとかした方がいいと思うんだ」
昼食を食べながら、切り出した。
「なんのこと?」
「おまえの毒舌のこと。このままだと、高校の時みたいになるぞ」
「うう。それは嫌だなあ」
高校の事件を思い出したのか、苦い顔になるミユ。
「だろ?」
「でも、どうすればいいのかな」
「サークル活動とかどうだ?」
「サークルの人たちに嫌われちゃうかも」
「それはあるんだよなあ」
どうすればいいかが難しい。
「同席していいか?」
後ろから声が聞こえてくる。
俺たちより数年歳上だろうか。それくらいの貫禄がある。
「ええ。どうぞ」
「じゃ、失礼する」
その人は、俺たちの向かいに腰掛けた。
俺たちが怪訝に思っていると、名刺が差し出された。
「俺はこういう者だ」
『Byte編集部部長 川口俊』
「Byteですか。入学前に読みましたよ。色々助かりました」
Byteは、計算機学部が公式に出している冊子だ。
定期刊行されているらしく、入学直後にも計算機室の前で配布していた。
俺たち新入生にとってのお役立ち情報が色々載っていて非常に助かった。
「その川口さんが俺たちに何か?」
俺もミユも初対面のはず。
「すまん。コンピュータ実習の噂を聞いてな。どんな猛者か興味を持って来たんだ」
「どんな噂ですか?」
「Excelでお絵かきしている女子がいると聞いてな。そこの……」
「朝倉美優です。それで、なんですか?」
つっけんどんな様子のミユ。俺は少しひやひやする。
「上級生にも物怖じしない態度、技量、面白いな。よければウチに来ないか?」
彼ははそんな唐突なお誘いをしたのだった。
「えっと。私ですか?」
あまりに予想外な対応に、素で反応するミユ。
「幸いウチは朝倉君みたいに口が悪くても気にしない奴が多い。どうだ?」
ミユの口が悪いとかさんざんな言い様だが、悪気は感じられなかった。
しかも、ミユの容姿に全くと言っていいほど興味を持っていない。
多くの男どもは、ミユの容姿に興味を惹かれるんだが。
「ええと。すぐには決められないです」
戸惑ったミユがなんとか返事を返す。
「とりあえず、見学でどうだ?もちろん、そこの彼も一緒に」
川口さんの意図が読めない。
(とりあえず、見てみるだけでもどうだ?)
(うん)
というわけで。
「よろしくお願いします。川口さん」
ミユはお辞儀をしたのだった。
「よろしく、朝倉さん。そこの彼はなんて呼べばいい?」
「高遠竜二です。苗字でも下の名前でも、どちらでも」
「じゃあ、高遠君。よろしく」
俺たちは謎に満ちたByte編集部を訪れることに。
一体何の目的だろうと少し警戒してしまう。
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