第47話 お化けごっこ

 足立さんが幼い頃に住んでいた家は、縦に長い3階建てだった。


 寝室は3階の階段を登り切ったところにあり、彼女は両親と、年の近い姉と妹の5人で、8畳の部屋に布団をぎっちり敷きつめて眠っていた。




 足立家の三姉妹は仲が良く、寝る前は布団の上で両親を待ちながら遊ぶのが常だった。


 寝室のドアを開けっ放しにしておくと、両親が階段を上ってくる足音がよく聞こえるし、壁に写る影が動くのも見える。


 いつの頃からか、足音が聞こえ始めると、彼女たちは「お化けが来るぞ!」と言って身を寄せあい、キャーキャー騒いで遊ぶようになった。両親もそれを知っているから、「わー! お化けだぞー!」などと言いながら部屋に入ってくる。寝る前の楽しい一時だった。


 ある晩、いつものように足立さんたちが寝室で遊んでいると、トントンという足音と共に、うっすらとした影が壁に写った。


「お化けが来る!」


 彼女たちは銘々に布団をかぶったり、枕を抱きしめたりしながら、父親か母親が顔を出すのを今か今かと待った。


 すると階段から、妙に首の長い、見知らぬ女がぬっと現れた。


 女は寝室の前を通り過ぎ、廊下の壁にぶつかって消えた。




 3人の叫び声を聞いて、両親がバタバタと階段を上がってきた。


 足立さんたちがあまりに騒ぐので家捜しをしたが、女などどこにもいなかった。


 以来、お化けごっこはやらなくなったという。

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