第46話 髪型は大事

 美容師の船田さんの家には、髪が伸びる日本人形があった。大きめの市松人形で、後ろ髪の一部が伸びるらしい。


 気味が悪いので家族は皆日頃から避けていたが、ある夜船田さんは、酔った勢いで市松人形の髪にシャギーを入れ、ワックスをつけて軽やかな小顔ヘアーにしてしまった。


 出来に満足した彼女は、自室のベッドに倒れ込んで眠ってしまったが、朝起きると、背中の真ん中に異様に小さな手の跡が赤くついていた。


 その手形は、だんだん薄くなりながらも一年ほど消えなかったので、船田さんはその年、せっかく買ったビキニが着られなかった。




 しかし、それ以来人形の髪が伸びなくなったので、さては気に入ったな、と船田さんはほくそ笑んだそうだ。


 今でも船田家にある市松人形は、オシャレな小顔ヘアになっているとのこと。

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