第41話誤算Ⅱ
『いや~!エリ~!エリ~!』
遠退く意識の下でノエルの悲鳴が聞こえていた。
ごめんね…ノエル。
ノエルにはずっと笑っていて欲しかったのに、思いっきり泣かせてしまって…。
きっとトラウマになるよね…。
数日しか一緒にいられなかったけれど何年も一緒にいたみたいに長く感じたよ。
一緒に過ごせて…楽しかった…。
私の意識は完全に無くなった。
『はっ!やるではないか小僧。よく自分の大事な娘ごと貫けたな。たいしたものだ』
九尾は一人、高笑いをしている。
『これで
九尾は一人、勝ち誇ったようにウキウキとしていた。
『いやよ…そんなの信じないんだから…エリ…嘘よね…?返事をしてよ…エリ~…皆一緒にいるって…言ったじゃない…』
ノエルはボロボロと涙を流していた。
ショックの余り立ち上がることも出来なくなっていた。
『おや、忘れておったわ。まだもう一人小娘がおったのぅ。さて、お前はどうしてやろうか?』
九尾は動けないノエルの目の前にしゃがみ込んだ。
ノエルは九尾を睨みつけた。
『ふん。小娘如きに何が出来ようか?動くことが出来ずにいるくせにのぅ。
そうじゃ。丁度いいから本当の事を小娘にだけ教えてやろうぞ。お前達を呼び寄せたのは妾じゃ。残念ながら酒呑童子ではない。あやつは美味しい酒の為ならば妾の言うことを聞くのじゃ』
九尾は完全に気を抜いていた。
『許さない…絶対にあんたは許さない!』
ノエルの怒りの感情が膨れ上がってきた。
『おうおう、それでどうするのじゃ?確か小娘には魔力もなければ力の覚醒もしておらんかったよな?』
なんで九尾がそこまで知っているんだ?
『納得いかん顔をしておるな。今回の事、全て妾が仕組んだ事。小娘のことも把握しておる』
九尾はまだ、自分が優位にいると思っていた。
『許さないと言ったはずよ!皆を返しなさい!』
ノエルは立ち上がり上から目線で九尾に命令をした。
その途端、ノエルの体が物凄い光を放って光りだした。
『うぅ…眩しい…目を開けておけぬぞ…』
あまりの眩しさに九尾は顔を覆った。
ノエルが光りだした途端、私の体はゆっくりと宙に浮き出した。
皆、ノエルの光に包まれていた。
なんだか温かい物に包まれている感じがする。
凄く心地が良くて幸せな気持ちがする。
このままずっといたいと思うくらい。
遠くで私を呼ぶ声が聞こえる…。
誰だろう?聞いたことがあるような…
ノエルの光が消えだした頃、皆はゆっくりと地面に降りていった。
『あれ~?ここどこ~?』
いなりちゃんの声が聞こえた。
いなりちゃん、目を覚ましたのね!
『う~ん…。あれ?いなり目が覚めたのか?』
柊さんが嬉しそうにいなりちゃんの頭を撫でている。
『ん?なんでエリちゃん覚醒姿で気、失ってるの?』
え?近くで柊さんの声が聞こえる?なんで?
私はさっきウルフに酒呑童子ごと刺されて…。
『刺された?』
私は勢い良く飛び起きた。
『うわっ!急に起きあがるなよ!』
危うく柊さんのおでこにぶつかるとこだった。
そうだ。ウルフに心臓を刺されて血を吐いて …て傷がない?
『エリ、お帰り』
声の方を向いたら笑顔のウルフと泣きじゃくっているノエルの姿があった。
『エリ~…』
ノエルが思いっきり抱きついてきた。
『ノエル、ごめんね。きっとあんな光景、怖かったよね』
私はギュッとノエルを抱き締めてあげた。
『でも、エリもウルフも柊もいなりも戻ってきたもん!それだけでいいもん…』
『エリ、信じてくれてありがとな』
『うん。ウルフのオーラが変わったのが伝わって来たの。最後の瞬間、ウルフが覚醒したのが見えたし。ウルフに任せて大丈夫だって』
ウルフを信じて正解だった。
『とこらでさ、まだ終わってないよな?九尾がノエル様に話しかけていたのは聞こえていた。そこでこの九尾をどうする?』
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