第31話芝居Ⅱ

安易にノエルやこの国を絶対に守る!と決めた訳ではないけれど、王様はもちろんしゅうさんも凄く真剣に国の事を考えて話をしていてなんだか私の決心が軽く感じてきてしまった…。

さすが参謀の勉強をしてきた柊さん。王様の部屋での会話の最中も、頭の中で色々な想定をし戦略も考えていたらしい。

王様の答えから予想して念の為影武者の用意とか敢えて広い庭で手合わせとか…。

後で説明してもらうまでその意図が全然分からなかった自分が悔しい。




王様の部屋からとりあえず私の部屋に戻って、手合わせ用の服を用意してもらっていた。その間に柊さんに聞いてみた。

『手合わせって、王様酷くはなさそうだったけど怪我しているのに大丈夫なの?影武者の用意も頼んでたけれど、影武者と手合わせするってこと?』

私は柊さんがどうして王様に手合わせをお願いしたのか、全く分からなかった。

『ん?エリちゃんは全く分からなかった?』

柊さんは私のところに来て頭を撫でた。

『何してんねん?』ウルフが来て柊さんの手首を掴んだ。

『こんな事でヤキモチ妬かないの』

柊さんは笑っているようで目は笑ってはいなかった…。

ウルフはちょっと拗ねた表情で手を離した。

『そんなに心が狭かったらエリちゃんに呆れられて覚醒出来なくなっちゃうよ?』

『マジか!?』ウルフは焦りだした。

『嘘だよ』柊さんは笑い出した。王様との謁見でやっぱり緊張していたんだろうか。

柊さんは楽しそう。

『ごめんごめん。なんかウルフの顔がすっげ~真剣だったからついからかいたくなってさ』

『いや、オレもなんか悪かったし?小さい男にはなりたないな…』

『そんなことより、ちゃんと説明欲しいんだけど?』

ウルフと柊さんの仲が良くなるのは良いけれど、私は巻き込まないで欲しい。

『手合わせの事だろ?王様の怪我はたいした事なかったから、きっとまた刺客が狙って来るだろうと思ったのさ。それにまだエリちゃんとウルフは覚醒出来ていない事にしてあるから、見晴らしの良い庭にいたら王様を狙いやすいし俺達の事も一緒に倒しておこうと考えるんじゃないかと思って』

あの短時間でそこまで考えたのか。頭の中はどうなっているんだろう?

『じゃあ、影武者は何をするの?』

『ノエル様がテントを欲しいって言っただろ?日焼けをしたくないって事は最低でも屋根が大きいタイプ。もしかしたら横と後ろも隠すタイプかもしれないけど。

テントがあるなら、中で王様が準備をしたり休憩したりすると相手も思うだろ?そうすると後ろから近付いて来た方が王様には気付かれ難いから、後ろから来るだろう。だから狙われたのは接近だったのか聞いたんだよ。接近なら剣だからね。

影武者は王様の代わりにテントの中にいてもらう。王様には衛兵か何かの格好で最初に手合わせをしてる振りをしてもらうかな』

『じゃあ、ノエルのテントは偶然に言った事ではないの?』

『いや、ノエル様は俺の意図を察知したんだと思うよ』

ノエルも戦略とか勉強しているとは言っていたけれどまさかあの会話で柊さんの意図が分かったの?

参謀は瞬時に相手が何を考えているかも分からないと駄目なんだ…。

『ついでに教えておくと一旦、俺達が部屋に戻ったのにも訳があるんだ。王様の部屋は盗聴されてる可能性があるなら手合わせの事をボスに連絡すると思った。準備にわざと時間をかけてちゃんと報告する時間を与えてやったのさ。ちなみにいなりを王様の部屋の周りをウロウロするように頼んだから運が良ければスパイを見付けられるかもね』

さらにここまでの事をあの時間の中で?

参謀はかなり頭の回転が速くないと駄目なんだ。

柊さんとノエルがいたら無敵に思える。

『二人共、凄いんだね。瞬時にそんなことを思いつくなんて…』

私はそんな風には考えられない。

だったら力をつけて戦うしかない。

本当に刺客が来たとしたら私が捕まえてやるってくらいの気持ちで望もう。




柊さんの予想通り、横と後ろも隠すタイプのテントだった。

もしかしたらノエルがわざとこのタイプのテントにしたのかもしれない。

上手い具合にスパイも動きだしてくれるといいんだけど、王様と手合わせをするなんて緊張してしまう。

柊さんの予想通りにいきますように…。

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