第28話和解Ⅰ

イブと侍従長に連れられて王様の自室前にやってきた。

なんだか緊張してきたな。

『そんなに堅苦しく考えることは御座いません。エリ

様は異世界の方ですから、この国の作法やしきたりをご存じないのは仕方のないことです。最初の挨拶と話すときははっきりと聞こえる声で王様に話しかけることだけを心掛けて頂きますよう…』

はっきりと聞こえる声で?

変なアドバイスだな。


コンコンコン


『失礼致します。ノエル様とお客様をお連れ致しました』

返事を待たずに侍従長はドアを開け部屋の中に入っていった。

ノエルを先頭に私達も部屋の中に入った。

王様と私達の間には大きなテーブルとソファがその両側にあった。

『御機嫌よう、お父様』

ノエルの顔は笑顔だけれど声は冷めた印象を受けた。

『あぁ。ちゃんと朝食は食べたのか?』

王様は大きな椅子に窓側に向いて座っているから、声だけで姿は見えなかった。

イメージしていた王様はもっと声が低くて威厳のある

感じなのかと思っていたら以外と声は若い印象を受けた。でも感じるオーラは威圧感がある。

『皆と一緒に食べたわよ』

『そうか。新しい客人も来たようだが、ノエルが迷惑をかけてはいないだろうか?』

『そんな!迷惑なんてかかっていないですよ。むしろいきなり異世界から現れた私達に良くしてくれて、本当に助かっています』

はっきりと聞こえる声で、と言われたからやたらと大きい声になってしまった。

横でウルフとしゅうさんが笑いをかみ殺していた。

『皆には自国の事に巻き込んで本当にすまないと思っている』

いきなり謝られてしまった。

『巻き込んですまないと思うならこっちを向いて言ったらどうなの?』

ノエルは小さい子供のように拗ねた態度をとっている。でも王様は、それをちゃんと感じとっていたようだ。

『そうだな。本当はノエルや皆に見せられる状態ではないんだけれど、ノエルがそう言うなら仕方ないか』

王様は苦笑いしている?

『王様、よろしいのですか?あれだけノエル様には絶対に言うなと仰られていられたのに…』

侍従長は何かを隠している言い方をした。

『何の事?お父様、何かあったの?こっちを向いて!』

最後の方は叫ぶような感じでノエルは言った。

ノエルの顔は不安で泣きそうになっている。

『大した事はないさ。ちょっと油断していただけで』

と言って王様は椅子を回して私達の方を向いた。

皆、王様の姿を見て絶句していた。

王様は怪我をしていて頭や腕等、見えるところに沢山包帯が巻かれていた。

『お父様!』

ノエルは泣きながら王様に駆け寄った。

イブも知らなかったのか顔が青ざめショックで倒れそうになったところを柊さんに支えられていた。そしてそのまま、イブはソファに座らされていた。

『お父様、何があったの?なんでこんなに怪我をしているの?』

王様はノエルを抱き締めてそのまま自分の膝の上に座らせた。王様のオーラが一気に優しいオーラに変わった。

ノエルはそんなことをされたことがないのか、恥ずかしくて降りようとしていた。

『驚かせてすまないな。ノエルに余計な心配を掛けたくなくてまだ黙っていようと思っていたんだが、予想より早く新しい客人が来たようだったのでな』

そう言う王様の顔はノエルを抱っこ出来て嬉しそうだ。

『あぁ、皆もソファに座ってくれ。イブも驚かせてすまない。ノエルと客人の世話で大変だと思ってな。イブにも心配をかけたくなくて黙っていた。イブもそのまま座っていなさい』

『王様、申し訳御座いません』

私達といる時のイブとはまた違うイブだ。

『ノエル、大きくなったな。久しぶりに抱っこが出来て嬉しいよ』

王様はずっとノエルの顔を見つめて嬉しそう。

『恥ずかしいけれど、お父様がこうしていたいならいてあげてもいいわよ』

まだノエルは素直じゃないな。見ていて微笑ましさを感じる。

『そうか?じゃあ今日はこのままお父さんの膝の上にいておくれ』

『このままずっと?怪我しているのに何言ってるのよ!』

『このくらい、大した事ない。ノエルの顔を見れて痛みなんかどっかいったさ』

あれ?さっきまでノエルが話していた王様とはイメージが違う。

私から見ても王様は、ノエルが大事で大切に思っていることが伝わってくるけれど…。やっぱりノエルの誤解だった?

それはウルフや柊さんも感じとっていたようだった。

『王様、急な謁見を許可頂きありがとう御座います』

急に柊さんが大人な部分を見せてきた。

『しかも異世界から来たにも関わらず、城内において頂き感謝しております』

柊さんは座ったまま御辞儀をした。

私とウルフ、いなりちゃんも慌ててお辞儀をした。

『楽にしてくれて構わない。皆はノエルの客人だしこの国の作法やしきたりをそこまで求めることはしない。ただ人として最低限のことを守ってくれればいい』

結構、寛大な王様なんだ。

『では、いきなりで申し訳ないのですが王様の知っていることを話して頂けますか?』

柊さんは物凄く真剣な顔だった。

『そうだな。皆についてとこの怪我のことを話しておかないといけないな』

そう言いながら、ノエルの頭を愛おしそうに撫でていた。

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