第24話団結Ⅲ
気がついたら外が明るくなっていて、わりと日が昇ってしまっていた。
ノックの音で我に返り、私とウルフの覚醒姿も元に戻った。
困っていたら柊さんが『相手が城の人間とは限らないからドアの横にいるよ。一応、ドアを開ける前に誰なのか聞けよ?』と言って素早くいなりちゃんと共にドアの両側に身を潜めていた。その行動の早さに戦いの経験が多いのがわかる。
ウルフとノエルで柊さんといなりちゃんのコップを片付けていた。
深呼吸してから私はドアの前に行き『誰ですか?』と聞いた。
『エリ様、おはようございます。ノエル様も起床なさっておられますか?』
柊さんの表情が一瞬強ばったように見えたけれど、そのままドアの横に待機していてので、私はそっとドアを開けた。
ドアの前にいたのはイブだった。
『おはよう、イブ。ウルフも起きているわ。結構日が昇っちゃてたね』
イブに話しかけながらも柊さんといなりちゃんが気になってぎこちない話し方になっていた。
『昨日はお疲れだと思いますわ。それにノエル様が一緒なら就寝も遅かったのではありませんか?』
イブはクスッと笑った。
さすがノエルの専属メイド。ノエルの行動は大体、イブに見透かされているようだ。
『おはよう、イブ。』
気が付いたら私の後ろにノエルが腰に手を当てて立っていた。ちょっと不機嫌そう?
『おはようございます、ノエル様。グッスリ眠れました?ところでノエル様。朝食はいかがなされますか?今日はお天気が良いのでバルコニーでお召し上がりになられますか?それとも皆様、このままエリ様のお部屋でお召し上がりになられますか?』
なんとなくイブにはバレているんじゃないかと思った。
『どうしてエリの部屋で?』ノエルはまだちょっと不機嫌そうな態度だ。
『今はまだ、他の方に知られたくないお客様がいらっしゃるのかと?』
イブの言葉に全員がビックリした。
『何故、そう思うのよ?』
ノエルは柊さんといなりちゃんの存在を隠そうと強気な口調だ。
『ドアが開く前にお部屋の中から私に向けて殺気を感じましたわ』イブは笑顔のままそう返答した。
私もノエルもどう答えていいのか迷っていたら、ドアの横にいた柊さんが姿を現した。
『さすが王女様付きのメイド。殺気を感じるなんて相当訓練受けてるでしょ?』
『初めまして。新しいお客様ですわね?一国の王女様にお仕えしているのですから、このくらい出来て当たり前ですわよ?』
なんだかイブの言い方にはトゲを感じた。
『へぇ、そうなんだ。王女様に仕えていてもちょっと意外だな。相当訓練重ねないとそうそう殺気は感じないと思うんだけどね~。ノエル様のメイドは相当優秀なんだね』
何故だか柊さんとイブの間にバチバチとライバル心みたいな緊張を感じる。
二人の様子を見ていたウルフが『二人は初対面なんやろ?なんでそないにバチバチやねん?』
やっぱり誰が見ても二人の間にへんな緊張感を感じていたみたい。
『あぁ、ごめんな。実は初対面ではないんだよ。俺は数日前にこの国に来てたって言っただろ?その時に一度偶然出会っているんだけど、その時はまだノエル様の専属メイドって知らなかったんだ。まぁ、その対面の仕方がお互いあまりいい感じではなかっただけの話しだよ』
何があったかまでは教えてくれなかった。
『そうですわ。しかも非常識にも夜中にお城に忍び込んで、さらに女性の部屋に行くとは思いもしませんでしたけれど。よくお城の敷地内に入れましたわね』
イブも何があったのかは教えてくれない。
『ウルフがいるのが分かっていたからな。さすがにエリちゃんだけなら夜中に部屋には行かないよ。
それと、衛兵の行動は何日か観察していたら大抵は一瞬でも隙が出来るのが分かるもんなんだぜ?王様に報告しといてやろうか?』
柊さんも挑戦的な話し方だ。
『もう!二人共いい加減にしてよ!お腹空いたからこの部屋に食事を持ってきて!』
二人のやりとりを聞いていたノエルが痺れを切らして口を挟んだ。
『僕もお腹空いたの~!』
いなりちゃんも真似して叫んだ。
『あら、申し訳ございません。すぐご用意出来ますわ』そう言うとイブは深々と頭を下げた後、右腕を上げて指を鳴らした。
イブの後ろには食事を用意したメイド達が沢山並んでいた。どこから現れたんだろう。
『では、お部屋に失礼致しますわね』
私とノエル、柊さんといなりちゃんは素早くドアの前から避けて通路を開けた。
イブとメイド達は一礼して部屋に入ってきた。イブの後ろにいたメイド達によってあっという間に朝食が並べられた。
『皆様、朝食が出来ましたわ。こちらにどうぞ』
イブはノエルの椅子を引いて待っている。
ノエルが座ったのを待ってから私達も椅子に座った。
『良い匂いね。さっそく頂きましょう』
そこからは皆、お腹が空いていたからか黙々と食事をしていた。
パンみたいな柔らかい物と温かいスープ。
サラダみたいな物は私の世界の物とあまり変わらないな。味も見た目も殆ど同じ。何も掛けなくてもそのままでも十分美味しい。
そして、しっかり食後のデザートと紅茶まである。
一通り食べ終わって紅茶のお代わりをしていると、ノエルが
『さっき聞きそびれたんだけれど、どうしていきなりウルフとエリは覚醒出来たの?』
そう言えば私も何故、急に覚醒したのか分からない。
『急に光りだしたんよな』
ウルフも分からないようだった。
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