第23話団結Ⅱ

『え?すっげー眩しいんだけど?』

『目、開けていられないの~』

眩しさで誰も目を開けていられない状態の中、しゅうさんといなりちゃんの声が聞こえた。

『いきなりなんなの?』

ノエルの声も聞こえてきた。

その後すぐに、光が消えたと思ったら私とウルフの姿が昨日と同じ半分狼で半分人間の姿になっていた。

『もう光は消えたわよ』

そう声を掛けたら恐る恐るいなりちゃんが目を開けた。柊さんとノエルも目を開け私とウルフを見て呆然としていた。

『え?何?二人は覚醒したらそんな姿になるの?エリちゃんは耳と尻尾が生えてなんだか凄く可愛いけど…。ウルフはゴツいな。人間の姿の方が可愛い。覚醒したら急に獣感が凄くなってるな』

柊さんは相当、驚いているようだった。

まぁ、昨日は間近で見ていないだろうし。

『エリ…。耳…。尻尾…。銀色?』

ノエルには話してあったけれど、やっぱり実際に見ると違うものなんだろうか。

驚きの余りノエルの話し方が片言になっている。でもノエルは驚きよりも好奇心の方が勝っているようだ。

『二人共、毛の色が同じなんて素敵だわ!日の光に当たるとキラキラして見えるわね』

ノエルはウルフのモサモサになった毛がかなり気になるみたいで、触るか触らないか腕を伸ばしては縮めての動作を繰り返している。

いなりちゃんはウルフを尊敬の眼差しで見ていた。

『ウルフ、凄く格好いいの~』いなりちゃんが興奮している。

『体ガシってしてフサフサ~てしてキラキラ~!羨ましいの~』

いなりちゃんは小さくて可愛いけど、やっぱり大きくてガッシリになりたいのかな?

狐の妖怪だから大きいイメージだけど、いなりちゃんはどうなんだろう?

今の姿は耳と尻尾があるから覚醒した私と同じ。いなりちゃんの毛の色は狐色だけど、もし姿が変わる

としたら毛の色はどうなるんだろうか?

そもそもいなりちゃんはウルフみたいに耳と尻尾を隠したり出来るの?

私が覚醒して変身するみたいに違う姿になる?

自分が覚醒したことよりもいなりちゃんの姿が変わるのかどうかの方が気になっていた。

『いなりちゃんはウルフみたいな大きい体になってみたいの?』

私はいなりちゃんに聞いてみた。

『大きい方が強く見えるもん。僕は小さいからいつもバカにされるしすぐに捕まっちゃうの…。それに最初のうちはまだ尻尾と耳を隠せなくて半妖って言われて妖怪達からもバカにされてたよ』

いなりちゃんも柊さんに会うまでは大変だったんだ。皆の雰囲気がちょっとしんみりしかけていたら

『でもね、今は柊と一緒だから大丈夫だよ~。柊は僕の姿バカにしないし、耳と尻尾が出ててもいいって言ってくれるの。一緒に強くなろうって言われたの。だから今は誰に何言われても柊がいるから平気~』

いなりちゃんは嬉しそうに柊さんに飛びついた。

『そうなんだ。耳と尻尾のある姿でもいなりちゃんは可愛いよ。それに、今は私もいなりちゃんと同じ姿だから私は嬉しいよ』

それを聞いた柊さんはいなりちゃんの頭を撫でながら『皆、思いっきりいなりに騙されてるよ』と笑っている。

『さっきも言ったけど、いなりは小さいけど元々強い妖怪なんだからな』

『そうなんだよ!僕本当は強いんだ!戦う時は耳と尻尾隠すの~。その方がみんな、油断するから勝ちやすいんだよ~。子供だと思って最初は手加減してくるから、一気に倒しちゃうの凄いでしょ~』

いなりちゃんは満面の笑みで自分は強い宣言をした。

まぁ確かに、体が小さいからって子供の妖怪とは限らないし弱いとも限らない。

私は思いっきりいなりちゃんの策略に引っかかっていたみたいだ。

じゃあ、いなりちゃんは人間で言うと何歳くらいなんだろう?

『生まれた時から妖怪の場合と長生きして途中から妖怪になる場合があるらしいよ。いなりも昔の記憶はないみたいだから正直どっちかは分からないみたいだ。でも俺達よりずっと長生きだし、もしかしたらウルフよりも年上かもしれない。妖怪でも力が目覚めるまでは人間と変わらない姿のもいるからな』

人間と同じ姿なら妖怪かどうかの見分けはつかないだろう。

『だから、昔はよく妖怪に騙された人が多かったって聞くわよ。実際に妖怪に騙されたせいで戦争になった国もあるらしいし。この国の場合は代々、王家の人達は皆より魔力が強かったから妖怪から守る術とかも色々伝わっているの。それでお父様が国中に結界を張って妖怪を入れないようにしていたんだけど…』

そうだ。この国には結界があるにも関わらずウルフが中に入れてしまっている。

いなりちゃんも妖怪だし他の世界から来たなら、すんなり入れてしまうのだろうか?

妖怪の力がまだ目覚めていない場合はすんなり入れてしまうのか?

『オレやいなりがこの国に入れてしまっている理由はなんや?その理由は柊は知っとるんか?』

飛ばされてきた時のウルフの姿は大きくて妖怪と分かる姿だった。

いなりちゃんも普段は耳と尻尾は隠していないみたいだから、妖怪と分かる姿だ。

『はっきりした理由は俺にも分からないよ。でも考えられる理由はいくつかあるな。一つは、王様の魔力と同じくらいかそれ以上の魔力を持つ奴の仕業だったら結界の影響を受けずに妖怪を結界内に飛ばせるはず。あとは、対象者を最初から結界に引っかからないような術にしておくとか?魔力が強ければそういうことも出来るんじゃないかと思うよ』

魔力が強ければ色々使い方があるんだな。

『あとは…』

何故か柊さんが言い淀んでいる。

あまり良い理由ではない?

『もう一つ浮かんだ理由は、結界を張った奴が呼んだ場合かな。自分の結界内に呼び寄せるだけだから、相手を認証していれば結界を解く必要もない。ちなみに、後から結界を張る場合でも呼びたい奴だけ結界内に入れて後は結界から弾き出すことが出来る』

もしウルフが入れた理由が結界を張った人が呼んだという事なら、それはノエルのお父さん、この国の王様がウルフと私もこの国に呼んだ事になる。

敵を倒す為に呼ばれたのだから、王様に呼ばれた可能性がないこともないとは思う。

でも、妖怪が入れないように結界を張っているのなら敵も入れないのでは?

そういう簡単な問題でもないのかな?

『もしそうだったとしたら、お父様は敵に狙われていることを知っていたことになるわよね?じゃないとエリやウルフを呼ぶ必要はないし、こんなに強力な結界はいらないと思うの』

やっぱり王様が呼び寄せたのかな?

そうなると王様も何が起こるか分かった上で行動していた?

『結局のところは、一度王様にも話を聞いてみた方がいいってことなんだけど。無理かな?ノエル様』

柊さんがちょっと含みのある言い方をしている。


コンコンコン


ノエルが返事をする前にドアをノックする音が聞こえてきた。

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