異世界に飛ばされて敵と戦ったら正体は意外な人でした

第21話覚悟Ⅱ

『私達に近づく為だったとしても、私達自身はどのくらいの力があるのかわからないわよ？私は魔力があるわけでもないし、敵を倒す為に呼ばれたんだとしても倒せる力があるのかもわからないわ…』

自分で言っておいてなんだかちょっとへこんできた。

『それも確認したくて例の妖怪を仕掛けたんだ。予定より早く来てしまったから不安だったけど、上手い具合にノエル様の力も覚醒しそうで良かったよ』

やっぱりノエルの力の覚醒ってあの光った事かな？

『俺の最終目的地がこの国なのは最初から決まっていたんだ。何故なら敵がこの国に何かしら手を出そうとしているからのがわかっていたから。それはどの世界の予言者も同じ事を言っていたんだ。ただ、どんな風に手を出すのか・いつなのかは皆わからなかったらしくて…。もしかしたら敵の力の方が強くて妨害されている可能性もあるんじゃないかって言われてた』

異世界の人達と繋がれる人よりも強い力？

そんな敵と戦って本当に勝てるの？

せっかく覚悟を決めたけれど、話を聞いていたら段々怖くなってきてしまった。

『色々詳しく教えてくれたのは、２つ前の国の予言者なんだけどその国にはたぶん一番長くいたと思うんだ。その国で色々修行をして色んな国の戦い方も教わっていた。だから元凶になっている敵に勝てる方法もあると思ってるぜ』

そう言い柊さんは私にウインクしてきた。

やっぱり柊さんは前向きに考えられる人だ。

『なんでこの国が目、つけられとるのかはもわからへんままなん？』

ウインクを見たウルフがちょっと不機嫌そうに聞いたら、柊さんは一瞬驚いた顔をした。

『残念だけど、理由はわからないままだね。最初はどの国なのかもわかっていなかったみたいだし。それでも予言者は予知夢でエリちゃん達が敵と対峙しているのを視たんだ。最初はエリちゃんとウルフだけだった。でも時間が近付いてくると内容が鮮明になってきて、そこにノエル様と俺・いなりも加わっていたらしい』

未来は一つではないしその時の選択でも変わるって話は聞いたことがある。

予言者の人達は前もってある程度の準備をしていたんだろうか？

『ところで私の力の覚醒って何？どうなったらちゃんと覚醒するのよ？』

そうだ。ノエルの力って結局なんだろう？

『ノエル様の力はエリちゃんとの絆がもっと強くなればきちんと覚醒するよ。相手と連動する力の場合は相手との絆の強さによって力の強さも変わってくるんだ。エリちゃんとウルフがそうだし、俺といなりも同じだよ。力がどんなものなのかは、きちんと覚醒してみないとはっきりは分からないかもしれないな』

絆の強さ。

ノエルとは出会ったばかりだけど、覚醒しそうになったってことは多少の絆が出来ているってことなのかな？

『絆？確かにエリとは会ったばかりな感じはしなくて、昔から知っている感じしかないわよ。でも、絆が今より強くないとちゃんと覚醒しなくて、今の状態だとどんな力かも分からないのよね？だとしたら訓練して覚醒するようなものでもないってことかしら？』

覚醒条件が分かったところできちんと覚醒させるのも難しそうだ。どんな力かも分からないなら敵と戦うまでに間に合うんだろうか？

『本当はエリちゃんがこの世界に来てもう少ししてから俺が来る予定だったんだ。俺が来る時にはノエル様は覚醒してる予定だったんだけど、やっぱり妨害があったらしくてね。妨害が激しくなる前にこの国に飛ばしもらったから予定より早くて、ノエル様の覚醒もまだだったんだ』

どうにも出来ない事もたまにはあるさ、と柊さんは肩を竦めた。

『もしかしたら、敵側にも予知夢を視る奴がいるかもしれないな。それでノエル様が覚醒する前に俺がこの国に来るように仕向けた可能性もある』

話を聞いていると本当にあちこちに妨害しているのがわかるな。

『この国の前にいた国には必要な物資調達をしたり戦略の勉強をしていたんだ。一応訓練は続けていたし、俺の戦闘能力は補佐じゃなくても役立つレベルだと自負している。

でも本当は、男としては補佐というより女の子を守れる存在になりたかったんだよな。例え自分より強い女の子が相手だとしても、女の子は守るものだって言われて育てられてきたから…』

柊さんの表情が少し暗くなった。過去に何かあったのだろうか？

『まぁ、予知夢通りにするのも嫌だっていうのもあるんだけど、俺が予定より早く来た事でノエル様の覚醒がずれたかもしれない。一つずれると連鎖的に他にもずれてくる物があるらしいし…』

一つがずれると他もずれるってことは、色んな出来事は繋がっていないように見えて実は全て繋がっているってことだろうか。

『もしノエル様の覚醒が間に合わなかったら、まずは俺が先に行くよ。万が一俺で倒せそうになかったとしても、勝てそうな戦略はあげられると思うし足手纏いだけには絶対にならないから安心して』

柊さんは自分に言い聞かせているかのように呟いて、無理矢理笑顔を作っているようにも見えた。

ノエルの覚醒は柊さんのせいではないと思うけれど、柊さんは自分が早くに来た事も原因だと気にしているみたいだった。

それだって、柊さんのせいではないしなんなら誰のせいでもないのに。

強いて言えば、私達をこの世界に来させる事になった敵のせいでしかない。

前向きに考える事が出来る柊さんは、責任感も強い人なのかもしれない。

なんとなく皆の雰囲気が暗くなっていると、いきなりガタンと大きな音を立ててノエルが立ち上がった。