第12話告白Ⅰ

『え…?光…。光った…。光だしだってどういうこと?』

私は頭が混乱していた為、つい声が大きくなってしまった。

ウルフも何を言ったらいいのか悩んでいるようだ。

『私もビックリしたわよ。でも、遠くで光ってるのが見えてそれから私も光だしたの。

エリ達が妖怪と戦っている時に、何かが光ったりしなかった?』

私とウルフは驚いて顔を見合わせた。

『実はな、妖怪と戦おうとしとった時にオレと嬢ちゃんの体も急に光だしたんよ』

ウルフが私の代わりにあの時のことを話し出してくれた。

『まずオレが話すさかい、嬢ちゃんは頭の中整理しとき』

ウルフが優しく頭を撫でてくれた。

私はそれだけでちょっと落ち着いてきた。

ノエルに本当のことを話しても同じように接してくれるのか不安があった。

私まで妖怪扱いされるんじゃないかっていう不安…。

『急に体が光だした思うつたら、オレの姿も嬢ちゃんの姿も半獣になっとったんよ』

『半獣?』

ノエルはかなり興味津々で身を乗り出して聞いてきた。

まるで漫画みたいに目の中に星があるんじゃないかってくらい、キラキラ感が伝わってくる。

『めっちゃ興味津々やなぁ。本当のこと話したら怖がったり態度変わってしまうんやないかって心配やったけど、ノエルちゃんなら大丈夫そうやないか?嬢ちゃん?』

笑いを噛み殺しながら私に聞いてきたウルフには、私の気持ちがお見通しのようだ。

それでも私は不安がなくなった訳ではないので、本当のことを話す前にノエルに聞いてみた。

『話す前にノエルに聞いておきたいことがあるんだけど…』

『なぁに?』

さっきまでとは違って子供らしい無邪気な顔でノエルは待っている。

『ノエルとは出会ったばかりなのに、素性のわからない私だけじゃなくウルフまでお城にいられるようにしてくれてありがとう。

今日、妖怪に出会った時ノエルはそんなに驚いていなかったみたいだけど、慣れちゃうくらい沢山妖怪に出会ったことあるの?

もしかしたら私が妖怪かもって思ったりしなかったの?』

私は恐る恐る聞いてみた。

『エリと出会った時に妖怪もいたでしょ?』

ノエルはクスクスと笑いながら答えた。

そうだった。妖怪を退治したからお城にいられるようになったんだった。

私のいた国には妖怪なんていないから、妖怪は稀な生き物だと思っていた。

でもすでに私も妖怪に3回も出会っていた。

ノエルに出会った時にいた妖怪、夜中に部屋に忍び込んできたウルフ、街中にいきなり現れた妖怪。

ウルフはあの時私が倒した妖怪だって言ってたけれど、私はウルフとあの妖怪は全然違うオーラだと感じた。だからどうしても、同じ妖怪だと思うことが出来なかった。

『元々、この国の人達は魔法を使えたのよ。昔は今よりも妖怪がいたし、周辺の国の人達よりも魔法が強かったから妖怪退治をお願いされたりもしていたわ。妖怪退治を仕事にしていた人も結構いたみたいよ』

もうさっきから驚く話しか聞いていない。

本当に自分のいた世界とは全く違う世界があるなんて、自分で体験していないと信じることなんて出来ないな。

『昔てどんくらい昔なん?今は魔法使える人はおらんの?』

もし妖怪だとばれたら退治されちゃうかもしれないのに、ウルフは魔法に興味津々だ。

『今はたまに国の周りに妖怪が出るくらいよ。魔法を使えるのは今は王族でもたまに現れるくらいね。今のところ王族で魔法を使えるのはお父様だけしか知らないわ』

『えっ!王様、魔法使えるの?』

『どんな魔法、使えるん?』

強そうなイメージではあったけど、まさか魔法が使えるなんてなんか意外だった。

『妖怪が国の周りにしか出ないのは、お父様が国の周りに結界を張ってるからなのよ』

ノエルは自分のことのように、自慢気に王様の話をしてくれた。

『それとね、一部の人しか知らないんだけど、何年も先とかは無理だけど予知能力もあるの。エリが来た時に最初は反対してる風だったでしょ?でも本当は、予知能力でわかっていたのよ。たぶんウルフのことも、素性が分からなくても一緒に行動すべき人だってわかっていると思うわ。だからエリとウルフのことは心配してないわ』

『だとしたら、ノエルちゃんが夜中に部屋抜け出してたこともばれてるかもしれんやないの?』

『ばれてるかもしれないし、ばれてないかもしれない…』

ウルフは冗談で言ったけど、ノエルの態度は落ち着かなくなっていた。そこは考えたことなかったのかな?こういう時は10歳の子供なんだって安心するなぁ。

『そ、それが予知能力って自分ではコントロール出来ないみたいなの。いつ見えるのかわからないし、どのくらい先が見えるかとかわからないみたいなのよ』

ノエルは自分を落ち着かせるかのように続きを話し出した。

『お父様は予知能力なんかなくてもいいって仰っていたわ。予知能力よりきちんと国民を守れる魔法が欲しかったって』

『確かに、いつ何を見られるかわからないならいざって時に国民を守れるとは限らないもんね』

『そう考えると便利なようで不便な魔法やなぁ。コントロール出来たらこんな魔法いらんて思わんだろうし、なんだか宝の持ち腐れやなぁ』

『だから予知能力のことは一部の人しか知らないのよ。皆に変に期待をさせても申し訳ないし、力を悪用しようとされても困るから』

ノエルはシュンとして下を向いている。

やっぱりいつまでも威厳のある格好いい王様でいてほしいんだろうな。

『でもさ、王様の予知能力があったから私とウルフはノエルと出会えたし一緒にいられるんだよね?』

『せやなぁ。予知能力で見てへんかったらオレらはただの不審者にしか思われへんかったかもしれんしなぁ』

『オレら?私も不審者なの!?』

何故だかウルフの言葉に納得がいかなかった。

『オレは一応旅人や。言葉使いはこの国の人達とちょっとちゃうけどな。でも嬢ちゃんは、格好は見たこともない服に更に剣を持っとったんやろ?最初に会ったんがノエルちゃんやなかったら、怪しまれとったんやないか?それにこの国で女性が剣を持ち歩くなんてありえへんやないか、ノエルちゃん?』

ノエルはポカンとした顔で私達の会話を聞いていた。

『そうね。妖怪がよく出ていた昔には戦う為に剣を持っていた女性もいたみたいだけど、それは家族で妖怪退治を仕事にしていたからかな。今はそれを仕事にしている家はないし、女性で剣を使える人は、もしかしたらもういないんじゃないかなぁ。

私が知っている限りでは、この国にはエリ以外いないと思うわ』

なんだかショックだった。

今はこの国の洋服を着ているから違和感がないだけで、制服でしかも剣を女性が持ち歩いていたら旅人でも通用しなかったの?

そう考えたら、最初に会ったのがノエルで本当に運が良かったのかも。

でも、ここに来る前に持っていたのは剣ではなく竹刀のはず。

だってこの国に飛ばされたのは、剣道大会の帰り道だったから。

でも服装や持ち物はそのままだったのに、どうして竹刀だけ剣になってた?

私をこの国に飛ばした何かは、竹刀だけを変えるのは簡単なくらい強い力があるってこと?

そもそも私をこの国に飛ばした意味は…?

『すまん、すまん。また悩ましてしもうたか?』

『初めて会った時のエリは本当に格好良かったわよ!私はお父様やイブに猛反対されて剣にも触らせてもらえないのよ。

絶対、剣を使える女性って格好良いと思うのになぁ。エリはきっと衛兵達にも負けないくらい強いと思うから、私は凄く羨ましいわよ』

また2人に心配かけちゃったみたい。

『ありがとう、ノエル。

私のいた国では私は強くいなくちゃいけなくて、負けることは許されなかったの。でもこの国に来る前にある大会で負けちゃって、自分に自信が持てなくなっていたんだよね…。

この国に来てまだほんの数日なのに色々ありすぎて、そんなこと考える余裕もなかったな。さっきのウルフの言葉で思い出しちゃって。でも、悩んでたって言うかちょっと考え込んでたって言うか…』

『う~ん…。考えること沢山ありすぎない?』

ノエルがちょっとうんざりした感じになっていた。

『そうなんよなぁ。考えなあかんこと沢山あるんやけど…。でも一気に考えよ思ても頭、混乱するだけやから1つずつ考えなな。

ほな、まずは半獣の話の続きをしよか?』

ウルフは以外と冷静で、上手に話を元に戻そうとしてくれた。



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