第11話休憩Ⅲ

『あっ!ごめんなさい…。誰にも言えなかったからつい叫んじゃった』

ノエルは恥ずかしそうに顔を赤らめて静かにイスに座った。

『あ~。ビックリはしたけど、私でよければそういう話も聞くよ?』

私は可愛いなぁと思いながらノエルに答えた。考え方が大人な部分と子供の部分があるんだな。

立場上、嫌でも大人に近付かないといけない事もあるからなんだろうなぁ。

年相応の、友達と遊んだりお互いの家にお泊まりしたりなんて生活は許されなさそうだし。

そもそも同年代の友達なんているのかな?

お姫様って何不自由ない生活かと思ってたけど、精神面は自由が利かなさそう。

ここにいる間にノエルの力になれることはしてあげたいな。

護衛としてだけじゃなく友達としても力になれたら…。

今までの自分は自分の事で精一杯だったけど、不思議とこの国にいるとノエルはもちろん、周りの人も守ってあげたいと思っている自分に気が付いた。

なんでこんな風に思えるようになったんだろう?

『叫んだらスッキリするもんやろ?』

ウルフはノエルの頭を撫でながら言った。

頭を撫でられたノエルは嬉しそうだ。

ウルフはノエルに、最初から何かあるって分かっていたのかな?

ウルフがいるとノエルは素直で、子供らしい部分を見ることが出来る。

それは、ウルフがノエルを自然体でいさせている?私もウルフがいると何故か安心感があるんだよな。

妖怪のうえに会ったばっかりだし、しかも一応私の家来ってことだけど、なんだか不思議な存在だな。

妖怪だからって嫌な感じはないけど、もし上手く正体を隠されていたら?

いつか裏切られたりしちゃったら?

せっかくノエルが元気になったのに、なんだかモヤモヤと考えだしてしまった。

だから2人に呼ばれてるのにまったく気付けずにいたら

『エ~リ~』

ノエルとウルフ2人から片方ずつ頬を引っ張られた。

『ふぁい…』

頬を引っ張られているから変な返事しか出来なかった。

『なんや怖い顔して。なんか不安な事でも出来たんか?』

『今度はエリが悩んでるの?私の愚痴聞いてもらったし、本題話したら後でちゃんと悩み聞くわよ?』

なんだか2人に心配されてしまった。

『ごめん、ごめん。大丈夫よ。2人は本当に仲がいいなぁと思って見てただけよ。

なんか本当の兄妹みたいで、会ったばっかりって感じがしないわよ』

今はノエルの話が優先だ。

私は笑顔で誤魔化した。

でもこの時のノエルの顔は一瞬、強張った顔になっていたことに気付いてはいなかった。

『そんなことないよ…。じゃあ、私もさっさと本題話さなきゃね』

急に元気になったノエルに、心の奥底にまだまだ大きい悩みがあるなんて私とウルフは思ってもいなかった。


『今日、街中で妖怪に会ったでしょ?その時にいくつか不思議なことがあったんだけどね…』

ノエルは話し出したと思ったらまたすぐに黙りこんでしまった。

でも今度は何も言わずノエルが話し出すのを待つことにした。

『色々ありすぎてちゃんと伝えられるかわからないけどいい?』

『もちろん大丈夫よ。ゆっくりでいいし、話したいことからでいいのよ。』

『うん。そんなん気にせんと話したいように話したったらえぇ。夜はまだまだ長いんやし、こっからが大人の時間や!』

せっかく良いこと言ってると思ったのに、最後はやっぱり軽かった…。

ノエルも呆れた顔になっている。

こんなんだと裏があるとも思えなくなってきたなぁ。

ノエルと目が合って、思わず2人でクスクスと笑いだしてしまった。

『そうね。夜は始まったばっかりだし寝ないで話を聞く覚悟は出来ているから安心して』

笑ったことで安心したのかノエルはいつもの笑顔になっていた。

『ありがとう、エリ、ウルフ。気持ちが軽くなったわ』

『やっぱり女の子っちゅうのは笑顔が一番やなぁ』

ウルフは1人ウンウンと頷きながらかなり嬉しそう。

ノエルがいつもの笑顔になるのは私も嬉しいけど、いつまでもウルフのノリは軽い。

『じゃあ、ようやく本題を話すわね』ノエルは最早、軽いウルフはスルーすることにしたようだ。

『あのね、イブと避難する為に2人とすぐ離れたでしょ?妖怪が出る直前は街は沢山人がいて賑やかだったのに、避難する時は誰もいなかったのよ』

『え?どういうこと…?』

私もウルフも直ぐには内容を理解出来なかった。

『逃げる途中、誰にも会わなかったわ。あの時はなんか違和感があるなぁとしか思わなかったんだけど、お城に戻ってから気付いたの。あんなに沢山人がいたはずなのに、どこにいったんだろうって。私達は街の人達の避難はさせてなかったなって。それに普段いるはずの衛兵達もいなかったわ』

どういうこと?

街の人達も衛兵もいなかったって…。

でも確かに私もあの時、違和感を感じていた。妖怪に気をとられてすぐそれどころじゃなくなっていたけど…。

ずっと引っ掛かっていたのはこのことだったのかも。

『でも、じゃああんなにいたはずの街の人達はどこにいったの?一瞬であの人達が消えたってこと?』

頭が混乱してきて、何からどう考えたらいいのか軽くパニックに陥りそうだ。

でも、まだ他にも違和感があったような気はする…。

『そのことも全然わからないままなんだけど、実はもう1つ不思議なことがあったんだよね』

『まださらになんかあったんか?』

ウルフも珍しく、頭が混乱しているみたい。

『うん。どっちかと言うとこっちの方が私には考えられない出来事だったんだよね』

多分、これ以上驚く内容ではないだろうと勝手に決めつけていた。

でも実際は、予想もしていないような内容だった。

『2人が妖怪と戦っている時ね、私の体が光だしたのよ』

私の頭の許容量が越えてきた気がする。

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