第6話対戦

『何?何かいるの?』

『ノエルちゃんは出来れば見ぃへん方がええ』

ウルフの声は低く、警戒しているのが伝わってくる。なるべく皆に見えないように両手を広げ視界を遮ってくれている。

『イブ、ノエルを連れて端の方に避難してて!』

私もノエルの護衛として2人を守ろうとした。

『嬢ちゃんも無理せんと、2人と一緒に隠れててええねんで?』

『私はノエルの護衛としてお城に置いてもらうことになってるの。だから逃げるわけにはいかないわ』

ちょっと恐いけど、ノエルとイブを守らなければいけない。

『2人共、怪我しないように気を付けてくださいね。さぁ、ノエル様行きましょう』

イブがノエルを促して横道へと避難する。

『ちゃんと戻ってきなさいよ~』

ノエルがそう大声で叫んでいった。

怪我しない自信なんてないけど、やるしかない。ウルフもいるからちょっと心強いけど、本当に信用していいのかが分かるかもしれない…。

『グヘヘ~

オマエヘンナニオイ…

タベテモオイシクナイ

ケガワダケヨコセ』

毛皮…?もしかしてこの妖怪、ウルフが本当は狼って分かるの?

『お前に渡す毛皮なんてあらへんわ』

ウルフが妖怪の姿の時よりも体は大きく威圧感があるけど、私も剣を抜いて構えてみた。だけど恐怖で腕が震えてるのが自分でもわかってしまう。

『本当に無理せんでええよ?1匹くらいならオレだけでも充分や』

『だからってこの先もずっと、ウルフに頼る訳にもいかないし…』

剣の扱いに慣れてる訳でも敵と戦った経験が多い訳でもない。

でも、だからと逃げる訳にはいかない。この先も妖怪に会ってしまうこともあるかもしれないし、護衛として役立つ為にも戦わなくては意味がない。

『そこまで覚悟決めてるんなら、お手並み拝見や。でもホンマに危ない思たらオレのことは気にせず、逃げるんやで?それだけは守ってもらうからな?』

『わかったわ…。でもなるべく逃げないし、ウルフと一緒なら勝てる気がするの』

私は体の前で剣を握り直した。

『ドッチモニガサナイ…

ドッチモオレノエモノ

オマエノケガワジマンデキル』

『だからお前に渡す毛皮なんてあらへん言うてるやろ!』

やっぱり妖怪同志、何か感じてるのかな?

今は無いはずのウルフの背中の毛が逆立っているだろうとわかるくらい、周りの空気もピリピリしているのが伝わってくる。

なら、私も負けていられない。

気持ちで負けたら本当に負けてしまうのは十分経験して知っている。

今までの私がそうだった。

でも今はノエルやイブ、街の人達を守りたい。何よりウルフの足手まといにはなりたくない。

私は今までにないくらい強い願いと共に、気を集中させて相手の気を感じとろうとした。

その瞬間、私とウルフの体が光だした。

『マブシ…イ…

メ…イタイ…

オマエタチ…ナニヲシタ』

私も目を開けていられない。

何がおきているの?

私達も眩しくて動くことが出来ない。

『なんやねん、これ…眩しくて身動きとられへん…。大丈夫か?嬢ちゃん。

今は下手に動いたら余計に危険やさかい、じっとしときよ』

『何も見えないもの、動きたくても動けないわ!』

実際は数秒だったんだろう。

でもかなり長い時間、光っているように感じた。

2人を包んでいた光がようやく弱まってきて、ウルフの姿が見えてきた。

『ウルフ、大丈夫?』

でも、そこに見えたウルフの姿は光る前のウルフの姿とは違っていた。

『え?ウルフ…?どうしたの、その姿⁉』

私は一瞬、困惑した。

ウルフの姿は半分人間、半分狼みたいになっていた。

人間の姿の時より体は大きくなっているし、耳と尻尾が生えている。

多少体にも毛がモサモサしてて半獣人って感じだ。

たまに2人だけの時に耳と尻尾が出ている時もあるけど、その時はどっちかと言うと犬にも見えるくらいだし仮装と誤魔化せる控え目な姿だった。

でも今回はいつもよりゴツくて、初めて見た獣寄りの姿だった。


『嬢ちゃん、大丈夫だったか?

て、うわ!なんやねんその姿!ホンマに嬢ちゃんか?』

何故かウルフも驚いている。

もしかして…私の姿も変わってしまっている⁉とっさに頭に手を置いてみた。

まさかの私の頭にも耳が生えている。そしてちゃんと尻尾まで生えていた。

体の大きさは変わってはいないし、毛も生えてはいなかったけど髪の毛の色が銀色になっていた。



私の体も半分、狼になっていた…。



ウルフほど獣感は強くはない



でも、ウルフと同じ銀色の髪の毛に耳と尻尾…



そして、内側から感じるエネルギー



いつもウルフから感じるのと同じオーラ…

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