第4話俺の彼女

海渡かいといた~。久しぶりに皆もいるんだね』

『あ、お帰り。いつ戻ってきたの?』

隣に置いていたカバンを避けて彼女用に場所を空ける。

彼女の名前は飛翔ひしょう優花ゆうか、翼と同じ名字なのは翼の従姉妹だからだ。

でも優花は最初は違う県に住んでいたから高校からの知り合いで、高校生の時から俺と付き合っている。

『優花、久しぶりだな。俺も少し前に戻ってきたんだ~』

『翼が召喚されたちょっと後に行って昨日戻ってきたわ』

そう、彼女の優花もよく召喚されるんだ。

皆、何故か大学に入ってからの方が召喚されることが増えたようだ。

だから大学に入ってからはなかなか優花とゆっくりとデートをすることも出来ない。

大学にいる時間もこいつらに勉強を教えたりと一緒にいることが多く、放課後は俺がバイトだったりと2人きりになる時間もあまりない。


『4人揃うとやっぱり目立つわね。遠くからでも見つけやすいわ』

まぁ、学年成績上位メンバーな上に俺も含め皆身長も高くて目立つ存在ではある。

大体180㎝前後の身長な上に進の髪色は赤いから1人でもかなり目立つ。

『優花もノートいる?次、俺らは授業ないからこのまま勉強会もするんだけど』

こいつらは俺より成績上位だけど、だからと勉強しなくても点を採れる訳でもないから一応の勉強はしている。

但し、優翔ゆうとは頭の構造が違うらしく教科書やノートを1回読めばほぼ理解してしまう。

実質、2人で勉強を教えている感じだけどいくら頭が良くても授業に出ていないとテストの範囲まではわからないし、先生によっては話したことからテストに出題する場合もあって曲者な先生も多い。

それはさすがに学校一秀才の優翔にも無理があるらしい。

ちなみに優花は学年4位。

皆、俺より上位…。

やっぱり異世界行くやつと学校しか行っていない俺とは何か違いがあるのだろうか。

順応性とか吸収力とか?


『いつだって海渡が待っててくれるから、絶対に異世界でなんか死なないし絶対、海渡の元に帰ってくるんだって毎回戦えるのよ』

どうしても怪我は避けられないけれど…。

申し訳なさそうに話す優花の腕や額には傷跡がある。

優花は傷跡に対して引け目があるようだが、優花がいてくれるなら俺は傷跡なんか気にしないんだけどな。

それに傷跡は異世界を救った証でもあると俺は思う。


異世界で怪我をしたり病気になっても、そのまま帰ってくることもあるし異世界で完治してから帰ってくることもある。

帰ってくるタイミングは誰にもわからない。

『俺らだって海渡が待っててくれるから絶対帰ってきてやるんだって思っているし、逆に安心して異世界行けるってのもあるんだぜ』

たまに進は優花に対抗してくる。

実は優花にヤキモチか?

『俺は一人っ子だから昔から優花は本当の姉弟きょうだいのように思ってるんだ。

だから俺が異世界に行ってる間、優花のことが心配だったけど海渡がいてくれるから安心して異世界に行けるんだよな』

翼の表情はまるで父親のようだ。


たまに異世界召喚が多過ぎて、精神的にやられてしまう人もいるらしい。

が、こいつらの拠り所はどうやら俺がここで異世界召喚されることなく待っていることらしく、いつ帰ることになっても俺がいることで踏ん張れているみたいだ。

まぁ、俺としても皆が元気に帰ってくるまでは心配だし元気に帰ってきたら凄く嬉しいしな。

『たまに海渡みたいに全く異世界召喚されない人っているらしいぜ。やっぱりそういう人もいないとこっちの世界が保てないんじゃないか?海渡が召喚されないことにも意味があると思うぜ。さすがの俺でもその理由まではわからないけどな』

優翔にそう言われるとなんだか照れる。


俺が召喚されない理由?

そんなこと考えたことはなかったけど…。

俺には皆と違う何かがあるってことか?


いったい何がどう違うって言うんだ~!

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