未知との出会い

 エミの言葉で寝ぼけ頭が一気に覚醒した。

「すみません…これは私にも分かりかねます。恐らくですが、この船が少し古い型の物なのでそれが原因かと…」

「はぁ…だから最新型のに乗りたかったのに…まぁいいや、ここにも『ヒト』はいるわけだし…

今ってセイレキでいうと2020年の8月6日なんだっけ?」

ヒマワリは投げやりに尋ねた。

「はい、左様でございます。」

エミは冷静に答えた。

「じゃあ、ちゃっちゃと調査を終わらせてハート星に帰ろうっと…」

ヒマワリは、ヒトの姿に見せるための機械をポッケにしまい、酸素を吸い二酸化炭素を吐いて呼吸できるようにするための薬を飲んだ。

「それじゃあ、行ってくるね。」

「いってらっしゃいませ。」

宇宙船の重々しい扉が開き、高湿な熱風がヒマワリの全身を包んだ。熱で喉が焼けるようだった。

 そして、未知の世界に踏み出す恐怖心を感じつつも、今まで感じたことのない高揚感を覚えた。


 周りにはハート星にもある草木が生い茂っており、建物もヒトも見当たらない。

(調査としてヒトと会話しなくちゃならないけど…ヒトが本当にいるか心配になってきた…)

不安を抱きながら、草をかき分け前へ前へと歩んでいった。

 しばらく歩き続けると、木が少なくひらけている場所があるのに気づいた。そこに着く頃には、夕暮れにも関わらず汗が滝のように流れていた。


「わあぁ……」

そこは、壮大な自然に囲まれた小さな街を一望できる崖だった。

 ハート星でも普段滅多に郊外に行かないヒマワリは、今まで見たことのない風景にのまれた。

 もっと、もっとその風景を見たい。

 その気持ちだけがヒマワリを突き動かしていた。

(きれい。すごくきれい…)

無心に崖の切り立った所に近づいて行ったとき。

「危な!何してるの!?!?」

後ろから切羽詰まった声が聞こえた瞬間、幻が解けたようにヒマワリは現実に引き戻された。

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