劉義真6 危うき放言
また読書著述を愛してはいたが、
軽挙妄動、思いやりの心がない。
尋常ではない付き合い方をしては、
「俺が大権を握れたら、
謝靈運と顔延之を大臣にして、
慧琳にはこの辺の取締を任せるかな」
などと放言していた。
まるで幼馴染かのごとく
馴れ馴れしく付き合っているのを嫌い、
それとなくの注意をさせた。
すると劉義真はこう答える。
「靈運はからっぽ、
延之は薄っぺらだ。
昔、
それっぽい肩書しかないやつでは
ろくろく謀反も起こせるまい、とな。
あいつらは情にもとづき、動く。
称賛されたときにどんな言葉が
用いられたのか、なんてのを
いちいち覚えてる奴らじゃない。
だから、戯れに
そう声をかけてやっただけなのさ」
義真聰明愛文義,而輕動無德業。與陳郡謝靈運、琅邪顏延之、慧琳道人並周旋異常,云得志之日,以靈運、延之為宰相,慧琳為西豫州都督。徐羨之等嫌義真與靈運、延之暱狎過甚,故使范晏從容戒之,義真曰:「靈運空疎,延之隘薄,魏文帝云鮮能以名節自立者。但性情所得,未能忘言於悟賞,故與之遊耳。」
義真は聰明にして文義を愛せど、輕動にして德業無し。陳郡の謝靈運、琅邪の顏延之、慧琳道人と並べて周旋せること常に異なれば、云えらく:「志を得たるの日、靈運、延之を以て宰相と為し、慧琳を西豫州都督と為さん」と。徐羨之らは義真を靈運、延之の暱狎なるの過甚たるを嫌い、故に范晏をして從容として之に戒ましめば、義真は曰く:「靈運は空疎にして延之は隘薄。魏文帝は云えらく、以て名節を以て自ら立せる能うは鮮なし、と。但だ性情の得る所なれば、未だ能く悟賞にて言を忘らば、故に之を與うを遊びたるのみ」と。
(宋書61-6_言語)
劉義真は、セリフだけを読んでいると頭も良く、ものも見えていて、かつ、人を見抜くにあたって鋭いとも言えそう。これがただ意識高いだけの虚言なのか、あるいはこう言う「見える人」が中央にいられるのを危ぶんだ徐羨之らによって貶められたのか。
振る舞いが微妙にちぐはぐで、宋書お得意の「わかりやすい物事への誘導」がうまく機能してる印象がない。沈約も、このへんはあえて曖昧に書いたのかもしれませんね。なんか史書記述を並べれば並べるほど劉義真がわからなくなる……これはやっぱり、このあとの上表から逃げるわけにも行かないよなあ。
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