第281話 本当の彼女
浜辺と宝田と別れて急いで龍安寺の近くまで戻ってきた私たちの目にうつったのは思いもしていなかった一場面だった。
「えっと……そのぉ……あぅぅ……」
そこに居たのは2人──1人は、背の高い外国人の観光客らしき人。
そしてもう1人は、普段の様子からはまったく想像も出来ないくらいに慌てていて、すぐにでも泣き出してしまいそうな顔をした星宮だった。
「ねぇ衣里……あれ、やばくない?」
「多分、道聞かれてるんだろうけど……」
でも、それはおかしい。
星宮はテストの成績は学年一なわけで、もちろん英語だっていつも高得点を取っている。
加えて、いつも表情1つ変えずに学校で生活する様は『ロボットみたい』と形容する人もいたくらいだ。
そんな星宮が、今はどうだろう?
ひどく取り乱して、得意なはずの英語もコミュニケーションの道具として上手く使えていない上に、普段のクールな雰囲気なんてものは一切感じない。
そう思った時、浜辺の言葉を思い出す。
『何か言うまで待ってみて、
それで全部わかるから』
もし今までの星宮に対するイメージが、私たちが勝手に思い込んでいただけのものだとしたら?
もしこれが、本当の星宮だとしたら?
もしそうだったなら、私たちのしていたことは彼女にとって1番傷つくことだったのだとしたら……
そこまで考えた私は──
「とりあえずいこう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます