第282話 嫉妬

星宮に話しかけていた外国人観光客は、道が分からず迷っていただけだったらしい。


私は道を丁寧に教えると、「アリガトウ」と一言だけ言ってその人は目的地に向かって行ってしまった。


「ごめん、星宮!」


そしてその後、私は本気で頭を下げた。


今日やったことだけじゃない。

今までやってきたことも全部話して謝った。


正直な事を言えば、私は彼女に対して嫉妬していたんだと思う。

私よりも頭が良くて、可愛い。そしてそのクールなように見えた性格に対しても「気に入らない」と思っていた。


それで「痛い目を見ればいい」なんて風に思って嫌がらせしたことを、私は許して貰えるとは思わなかった。


しかし彼女は……


「あ、あれって……

嫌がらせだったんですか……?」


「へ?」


「てっきり私……存在感が薄すぎて忘れられてしまったのかと思っていました……」


多分それは、私達に気を使って言ったんだと思う。


それに気づいた私は、もう一度頭を下げて「ほんとにごめん!」と謝ったのだけど……


「ほんとうに、気にしてないです

それより、せっかくの修学旅行なんです。

明るく行きましょうよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る