第265話 帰りはあっち

「おはよう、ひよりさん」


「ひより先輩こんにちは〜!」


「おはよう、さち。

……雪原、帰りはあっちよ」


土曜日の朝。何故このメンバーで集まっているかと言うと、それはテスト勉強のためだった。


本当ならさちと2人っきりで教えてもらおうと思っていたのに、バイト終わりに2人でその話をしていた所で聞かれてしまいこの不純物までついてくるとか言い始めたのだ。


「先輩?指の方向がエレベーターじゃなくて何もない空を指している気がするのは気のせいですか?

気のせいですよね〜!あははは──」


「気のせいじゃない。

ほら、空に帰れ。というか天にされろ」


「先輩ったら、冗談が上手ですね!

お邪魔しま〜す!」


「チッ」


最近はずっとこんな感じで、バイト中もいつもこの後輩女子に振り回されている。我ながら情けない。


「わぁ〜!綺麗に整ってますね!」


3人で中に入ると、雪原はさっそく目についた本棚を物色し始めた。


「飲み物何がいい?」


「僕はコーヒーで」


「私は紅茶をお願いします!」


「分かった。コーヒー2つね」


「紅茶ですよ〜?」


「…………」


「え!?ちょっと、ほんとにコーヒー入れてませんよね!?飲めませんよ私!?」


無言でさちの分のコーヒーを入れていると慌てて雪原がキッチンにやってきた。

ほんとに騒がしいやつね……


「良かったぁ……紅茶ですね!

先輩って意外と優しいところありますよね!

ツンデレですか?」


「…………」


「あ、ダメですよ!無言で紅茶にコーヒー混ぜようとしないでください〜!」


──と言う感じに、そんなちょっとした茶番から私たちの勉強会ははじまった。

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