第264話 教えて
体育祭と文化祭。
その2つの大きな行事が終わった頃に、やってくる「それ」は多くの生徒たちを絶望のどん底へとたたき落とす絶望の行事だ。
そして「それ」にともなって、増えてきたのが……
「浜辺くんっ。ここってどうやったら解けるの?」
「そこは微分した時にでてくるこれを──」
「それ」とはつまり、テストである。
そして増えてきたのは、今みたいな分からない問題を質問しに来る人達だ。
「おぉ〜すごいわかりやすい!ありがとう!」
今やってきた女の子なんかは今日だけでもう3回目なのだが、かなり初歩的なところも分からなかったりしていて心配だ。
まぁそれでももちろん、ちゃんと勉強している人もいるわけなんだけど……
「葉幸くん。
基礎的なところから全部わからないです」
「心夏、そこはさすがに嘘だよね?」
「いえ、本当です。
基本の問題が分かってない人にはより丁寧に教えてるなぁ〜と、観察の結果分かったので私も分からないフリをして丁寧に優しく教えてもらおうなんて思っていませんよ?」
(思ってたんだなぁ……)
さっきの女の子は3回目と言ったものの心夏はそれをはるかに超えて、これで14回目だ。
「この関数のグラフは?」
「これはこの前見た問題ですね……
たしかこうして……こうですかね?」
「うん、基礎どころか応用まで完璧だね。
僕が教えることはないかな」
「あっ……」
罠にはめられたと心夏は気づくと、今度は僕にジト目を向けてくる。
いや、僕悪くなくない?
結局この後も、やってくる人の分からないところを教える合間に、「分かりません」とわかっているところを何度も心夏は聞きにくるのだった。
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