第261話 別のベクトル

「遅れてごめ……ん?」


姉さんに呼び出されて、遅れて図書館にやってきた僕の目の前に飛び込んできたのは予想もしていなかった光景だった。


「……」


まず最初に、何故か顔を赤くして悔しそうにしている雪原さん。


そして、もう1人は……


「きゅぅ〜……」


隅の方で体操座りになって膝に顔をうずめさせた状態で、動物の鳴き声みたいな可愛い声を出している星宮さんだ。


「えっと、雪原さん。これは……?」


「ずるいです……」


ひとまず1番近くにいた雪原さんに声をかけてみると、雪原さんはポツリと一言だけ答えた。


「ずるい……?

えっと、僕何かしたな……?」


「違います!星宮先輩の事です!」


星宮さんが、ずるい……?

そもそも2人って、知り合い?


「あんなの、敵いませんよ!可愛すぎます!」


「はい……?」


「私とはまったく別のベクトルです!

あれを何も意識せず天然でやってるんだったら、それはもうオバケです!美少女オバケですよ!」


うん。後輩が何を言ってるのか分からない件。


「とにかく、私は家に帰って作戦を立て直します!

なので、星宮先輩はせんぱいがお願いします!」


「え、ちょっと!?」


雪原さんは結局、これといって今の状態の説明もしてくれないまま帰ってしまった。



どうすればいいんだこれは……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る