第254話 目覚めさせるには
お互いの息がかかるくらいの超至近距離にまでつめてきた心夏は、真っ直ぐに僕の目を見ながら発した言葉は……
「葉幸くんは、男の子が好きなんですか?」
「はい?」
ん?男の子?オトコノコって、男の子の事?
「葉幸くんは、最近どんどん女の子になってしまっています。ことある事に女装しています」
「いや、そんなには……」
否定しようとしながら、
最近の自分を思い返してみると……
ことある事に女装してるじゃん、僕……
「今だってそうです!
そんなによく似合った浴衣を着て……
そんなの、誘ってるようにしか見えませんよ!」
心夏はそう言うと、今度は僕の手を握ってきた。
「そんな悪い子には、お仕置です」
普段の天使のような笑顔とは違って、小悪魔みたくイジワルに心夏は笑う。
「眠り姫がどうすれば目覚めるのか、
知っていますか?」
「眠り姫……?それはもちろん──」
「そう、キスです。
──ところで、私の目の前にも間違った道に進もうとしている眠り姫がいるんです。
その目を覚まさせようと思ったら、それはもうキスするしかないですよね?」
心夏はそう前置きすると、おもむろに目を瞑り……
「間違った道に進もうとする眠り姫って僕の事!?
そもそも僕、男子のことなんて──」
「むぅ……ここまでさせておいて、女の子に恥をかかせるんですか?」
ぷくーっと頬を膨らませて一旦僕から顔を離す心夏。
いやね?すっごく可愛いのはそうなんだけど、そういうのは年齢的にもまだ早いというか……
と言った具合に、まごついていたところで……
「眠り姫く〜ん!居たら返事して〜!」
「……誰か来ましたね。
ここまでみたいです」
そう言って、心夏はすっと立ち上がった。
多分篠木先輩だろう。さっきステージから降りた後に、何か話があると言っていたのを思い出す。
『ドキドキしたぁ……』なんてふうに、心の中でもうこれ以上の事は無いと安心した所で……
「葉幸くん。私はあなたが男の子が好きにならないようにするために、あなたを私にメロメロにさせることに決めました」
「めろめろ?僕が心夏にメロメロ……
え!?メロメロ!?」
告白みたいな言葉に僕があわあわとしているところに、心夏はさらに追い打ちを仕掛けてくる。
「あくまでもこれは葉幸くんのためで、自分のためではこれっぽっちもないのですが!……今回みたいに、簡単に逃げられるとは思わないでくださいね?」
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