第253話 密着

「あ、やっと見つけました……」


キャンプファイヤーから少し離れた場所で座ってみんなの様子を見ていると、小走りで心夏がやってきた。

どうやら僕を探していたみたいだ。


「美雪さんとは一緒じゃないの?」


「美雪ちゃんは他の友達と遊びにいきましたよ」


ストンと僕の隣に座る。ベンチは3人は余裕を持って座れるくらいのスペースがあるのに、何故か肩がくっつくくらいに近い。


「えっと、心夏?」


「葉幸くん、知ってますか?」


心夏は僕の事を上目遣いに見つめると……


「キャンプファイヤーの時間を一緒に過ごした男女が結ばれるって言うものです」


どうやら、クラスの男子たちは伝説になる事は出来なかったものの、伝説を作る事はできたらしい。


ん?どうして心夏がその話を?


心夏は僕の腕をぎゅっと抱きしめると、さらに距離が近くなってしまう。


「ちょっと?ここな──」


「私と、伝説になりませんか?」


ん?伝説?

伝説って、さっきあの男子達がいってたあの?


「こ、心夏?えっと、それはつまり?」


「──けっこん」


え?けっこん……?


心夏のトクントクンという心臓の音が、腕に密着した胸からはっきりと感じられてしまう。

暗くなっていうのに、はっきり分かるくらいに心夏は顔を赤くしている。


血痕?

それとも結婚?

それともそれとも結魂?


いやまぁ状況的に……


「さすがに、冗談だよね……?」


「冗談、ですか……

私が冗談でそんなこと言うと思いますか?」


「いや、結婚はさすがに急というか……

気が早いと言うか……」


「分かりました……」


何が分かったのか、心夏は立ち上がると……


──ポスン


「ちょ──」


「シーっ。見つかってしまいますよ?」


心夏は突然、向かい合うように僕の膝の上に座ってくるのだった……

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