第252話 無理なものは無理

5分後……


「くそっ!俺たちは……伝説にはなれないのか!」


「なんでだ!?なんでなんだ!!こんなに努力してるのに!!」


「ちくしょう……ちくしょぉぉぉう!!!」


解散したばかりなのにすぐに戻ってきたクラスの男子たちは悔しそうに地面を叩いている。


最初は何をしに行ったのかさっぱり分からなかったけど、僕と同じようにこの場に残った梶原くんが状況を理解していたらしく事細かに教えて貰った。


なんでも、彼らは片っ端から女子に声をかけてはキャンプファイヤーを一緒に踊らないかと誘い、玉砕されていたらしい。


これで成功していればそこから告白、そしてそれが伝説になるという作戦だったらしい。


「こうなったら……最終手段を使うしかねぇ……」


「そんなものが!?

最終手段ってなんですか兄貴!」


「このままでは我が軍は……」


こっぴどく振られた男たちは、何やらヒソヒソと話し始めたかと思うと、その中からでてきた原田くんは突然僕の方に近づいてきて……


「俺と踊ってください!」


「え?普通に嫌だけど……」


「そこをなんとか!」


「いや、そういう趣味はないから……」


「俺の人生のメモリーには、浴衣美少女とのダンスの記憶が必要なんだ!

頼む!一生のお願い!」


うわしつこい。土下座までしてきたよ……

そこまでされるとさすがに引くよ……


「無理なものは無理ですっ」


こうして、我がクラスの男子たちの伝説になりたいという夢は、はかなく散ってしまったのだった。

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