第231話 今日も言えなかった
「今日も何もいえなかったよぉぉぉぉぉ!!!」
文化祭の出店も決まり、その日のうちに姉さんに申請書を出した後の事。
委員会の当番の日だったため、放課後に図書館にやってきた僕に突然抱きついてきたのは星宮さんだった。
「あ〜……。またダメだったんだ」
これに関しては、かなり高頻度で行われるやり取りなので慣れている僕はひとまず星宮さんが落ち着けるように頭を撫でる。
だいたいは、クラスの人に話しかけられたけど何も答えられずにあわあわしていてらもう話しかけてくれた人いなくなってた、がテンプレパターンだ。
──なんていうか、いつも通りだなぁ……
夏祭りの時の『あれ』がまるで嘘だったみたいだ。
というか、もしかしたら僕の早とちりで、特に意味のなかったことなのかもしれないな、なんてことを考えていると……
「すぅ……すぅ………」
「うわ、寝てるし……」
気づけばすっかり安心しきった表情で眠っている星宮さん。
僕はそんな星宮さんが起きないように、慎重に運んで椅子に寝かせてから今日の仕事を確認する。
どうせ図書委員の仕事なんて、多い時でも片手で数えられるくらいの仕事数しかないし、1人でも──
「え……?」
何やらびっしりと上から下まで書かれた本の返却リストに絶句する。
そういえば、確か1年生のどこかの1クラスが授業中に生徒1人1冊ずつ借りて行ったような覚えが……
さすがにこれを1人でリストを見ながら元あった棚に戻すのは時間がかかるし、星宮さんを起こして2人でさっさと終わらせようと思って星宮さんの方に視線を移すと……
「えっへへへ〜!プリンだぁ!!!」
「幸せそうな夢見てるなぁ……」
とてもさっきまで泣いていたようには見えない。
そして、とても起こしずらい。
「仕方ない、1人でやるかぁ……」
結局、終わったのは6時をすぎた頃だった……
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