第205話 悪い夢

「──私、浜辺くんとならずっと一緒に、

楽しく毎日を過ごせるんだろうなぁ……」


まるで恥ずかしがる素振りもなく、自然と発せられたその言葉に私たち3人は呆然としていた。


口を開けたまま、しばらく花火が上がっている場所をただ眺めていると、一番最初に時が動き出した簪さんが私の体を揺さぶってくる。


「おーい!帰ってきて!

現実はすぐそこですよー!」


「ハッ!?

な、なんだか悪い夢を見ていた気が……」


見ている先にはもう葉幸くん達はいなくなっていて、その代わりに花火が次から次に打ち上げられている。


「いやぁ〜凄いものを見てしまいましたねぇ……

まさか、葉幸とさっきーが──」


「「それ以上はいけない」」


「???

──あぁ、なるほど……」


まーちゃんは、よく分からないと言うように首を傾げますが、すぐに何かを察してくれたのかその先の言葉を飲み込んでくれました。


「と、とりあえず戻りませんか?」


「そうだね」


「みんな心配してるかもしれないしね」



私たち3人はそれぞれ思うことがありながらも、なんとかそれを胸の内に押しとどめて、お祭りを最後までそれなりに楽しんで終わるのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る