第204話 秘密の特等席

お祭りも終盤。


葉柚さんとマーちゃんも合流して、7人で最後に花火を見て帰ろうということになり移動していた時の事。


「私、ちょっと喉乾いたかも……」


「私も!」


「何か飲みたいですね……」


心夏ちゃんとマーちゃん、それに、浜辺くんのバイト仲間の簪さんの意見が一致して3人は飲み物を買ってくると言って一度グループを離れてしまいました。


そして、4人だけになったままで歩いていると……


「美雪ちゃん!ちょっとトイレ行きたいんだけどついてきてくれないかな?」


「はい!喜んで!!!」


気づけば、美雪ちゃんと葉柚さんまでいなくなってしまい私と浜辺くんの2人きりです。


──そういえば、私も……


私は、チビっとつまんでいた浜辺くんの浴衣を2回ほど弱い力で引っ張ると、「どうしたの?」と優しく声をかけてくれます。


「少し、ついてきて?」



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・葉幸視点


花火を見に行く人達の作る列から外れて林の中を歩いていた僕達がやってきたのは、なだらかな丘の上だった。


「えっと、ここは?」


「ここは、私の秘密の特等席。

誰にも教えたことないんだよ?」


驚く僕に、イタズラが成功した子供みたいに可愛らしく微笑む星宮さん。

しかし、その次の瞬間にはモジモジとして、何か言いたげな顔をするが、僕と目が合うと目を逸らしてしまう。


「ここに連れてきたのは、浜辺くんに伝えたいことがあってなんだ」


「伝えたいこと?」


「うん……」


星宮さんは先程と同じように何かと葛藤している様子だった。

星宮さんが言い出すまで何も言わずに待っていると、やがて星宮さんは顔を上げて、僕にその決意のこもった目を向ける。


「あのね。私、浜辺くんにはすっっっごく感謝してるんだ。私みたいな人にいつも構ってくれて、それに夏休みは友達作りまで手伝ってくれて……

本当に、ありがとう」


星宮さんの、心からの感謝の言葉に僕はぎこちなく「う、うん……」と頷くことしかできない。


そんな僕を見て星宮さんはくすくすと楽しそうに笑うと、その後に衝撃の爆弾発言をカマしてきた。


「私、浜辺くんとならずっと一緒に、

楽しく毎日を過ごせるんだろうなぁ……」


その瞬間。

ドーン!と1発、特大の花火が星宮さんの背景を彩った。


「わっ、ビックリした……」


しかしそれも数秒のこと。すぐにそれは消えてしまい、小さな花火が上がり始める。


「みんなのところ、戻ろっか?」

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