第194話 震える足

「ここなら誰も来ないぜ、姉ちゃん?」


それは一瞬の事。真田くんが私の分の飲み物まで買ってきてくれると言って、少しの間だけ1人になってしまった時の事だった。


目の前でゲスな笑顔を浮かべている大男に、私はあっという間に連れ去られてあっという間にトイレの影、人目につかない場所まで連れてこられてしまった。


抵抗しようにも男の方が力が強くてどうにもならず、次に私の中に生まれたのは「恐怖」の感情だった。


「離して──ん!?んー!!!!」


「うるさいぜ姉ちゃん?

これ以上うるさくされちゃ人が来ちまうからなぁ。

無理やり黙らせるしか──」


「待てよ」


もはや抵抗する事も出来ずに震えることしかできなかった私の体に、男の手が触れようとしたその時。

陽の光がさして来ている方に立っていたのは、さっきまで一緒に行動していた真田くんだった。


「なんだてめぇ?殺すぞ?」


その大男は私を変わらず拘束したまま、突然現れた真田さんに言葉だけでも腰が抜けてしまいそうな迫力の声でそんな事をいいました。


「殺す?お前が俺を?ありえないだろ」


そんなことを言ってバカにしたように笑う真田くんの足は、今の距離では分かりにくいですが確かに震えています。


「真田くん!もう──」


刹那

大男はその図体からは予測も出来ないような速さで真田くんとの距離を詰めると、拳を振り上げ……


「うぁぁぁぁぁ!!!!!!」

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