第190話 どこ見てんのよっ!ばかっ!

「ごめんね心夏。僕の都合で急に予定組んじゃって」


「いえいえ、大丈夫ですよ。

…それに、2人っきりにもなれましたし……」


「ここ!流れるプールなんてありますよ!行きましょう!」と、元気いっぱいの調子の隣を歩く心夏は何故か少し恥ずかしそうにしながらも優しく微笑んで答えてくれた。


全ては作戦通りに進んでいる。

第1段階の『真田さんが姉さんの水着姿にデレている隙にグループから離脱』はあまりにもあっさりと成功した。


(後は頼んだよ、姉さん……)


この後の作戦に関しては全て姉さんが1人で行うことになっている。


本当は僕も頼んだ身で何もしないのはどうかと思ったから、影で見守って何かしらのアシストをしたかったのだけれど、「さちくんがそんなことしてたら、心夏ちゃんはどーするのー?」と、姉さんに何故かジト目で睨まれた。


「まぁ確かに、心夏を1人にしておくのは危なすぎるけど……」


今も、周りの男達の視線は心夏に釘付けだ。

そんな中には彼女と来ていたらしい男が「どこ見てんのよっ!ばかっ!」と怒られていたりもしていた。


──ここは僕が男らしく心夏をリードして、他の男が近づけないようにしないと……


ナンパというのが、どれだけの恐怖を覚えるものなのかということは先日身をもって味わったばかりだ。


あんな思いを友達にして欲しくはない。


僕は、そんな強い決意を固めると心夏の手に、なるべく平静を装って手を伸ばした。

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