第188話 デレ

お客さんも少なくなってきた昼下がりの午後。

最近、規則正しい生活を送っていたために、仕事中に上手く寝れていなかった僕は暇だったので真田さんの、様子を観察していた。


仕事中に寝るな……?うるさいやいっ


……まぁ、そんなことは置いておくとして。


最近、真田さんの仕事中の『デレ』が悪化している気がするのだ。


「真田く〜ん!オムライス1つ!」


「はぁ〜い!かしこまりましたお嬢様!」


この通り、前までは顔にまでしか出ていなかった「葉柚様万歳!!!葉柚様最高!!!」といった真田さんの感情が、ついに言葉にまで現れ始めたのだ。


更に言えば……


「ん」


「ん」


簪さんに、作ったオムライスを渡した後の真田さんにご注目頂きたい。そして、静かにして耳を傾けて貰いたい。


「好きです!付き合ってください!………いや、普通すぎるか……なら、いっその事、愛しています!結婚してください!とか?……いや、引かれるか……?」


お分かりいただけただろうか


そこにあったのは、デレデレと顔を緩ませ、告白の言葉を考える1人の男だ。


いや、僕としては別に真田さんが姉さんに告白するのは全然構わないし。もし、仮に、仮に!付き合えたとしても、僕はそれもいいんじゃないかと思ってる。


もちろん、姉さんにその気はないということは知ってるんだけど……


でも、この調子だといずれ仕事に影響が出かねない。

真田さんと2人で厨房を切り盛りする僕としては、そんな僕の負担が増えることになるようなことは断固お断りなのだ。


「よし。今日の内に作戦を決行しよう……」


かくして、僕の『真田さんを働けるように元に戻そう大作戦』が幕を開けるのだった。

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