第185話 弟子
MS組とSM組によるどちらがMS組でどちらがSM組なのかという、とてもとてもどうでもいい口喧嘩が始まってから数分後、無事自らの所属する組を理解したMS組3人は僕の質問した「ここで何をしていたのか」という質問に素直にこたえてくれた。
話によると、あの3人はお賽銭ドロボウがいるとの情報をどこからか聞きつけて、それを捕まえようと張り込んでいたらしい。
悪い組織的ななにかと思っていたMS組だったが、どうやら抗争時以外は社会貢献活動を主軸に活動するボランティア団体的なそれだったようで、すっかり蚊帳の外にされていたじいさんも、その話を聞いて3人にアメちゃんを配っていた。
そうして、そんなたくさんの事件や事故が入り乱れた日から一夜明けた今日。
浜辺家別荘の広いお庭ではBBQ会が開かれていた。
昨日の騒動で迷惑をかけたことへの償いにと、じいさんが食費を全額負担してくれたのだ。
ちなみに、MS組とSM組は神社の防衛をしているらしくこの場にいるのは僕達6人+康生くんとじいさんだけだ。
(喧嘩してないか、心配だけどなぁ……)
「美味しいですね、葉幸くんっ」
「うん」
心夏は、幸せそうな顔で次から次にお肉を口に放り込んでいた。
「心夏ちゃん、ちょっといいかな〜?」
「はーい!」
心夏は姉さんに呼ばれると、「葉幸くんもしっかり食べるんですよ?」と言って行ってしまった。
そしてそれと入れ替わりにやってきたのは康生くんだった。
「にいちゃん、昨日はオラの勘違いで本当に悪いことしてごめんなさい」
「いや、いいよ。康生くんも、じいさんのためにお賽銭ドロボウを捕まえたかったわけでしょ?
小学生なのに、自分よりも背丈の高い人間に立ち向かったわけだからそれはすごいことだと思うよ?」
とはいえ、僕も星宮さんも弱点だらけの最弱ペアだったわけだけど……
そんな僕の話を聞いた康生くんは、目をキラキラとさせて僕を見ている。
──なんだろう。嫌な予感がする……
「にいちゃん!オラを弟子にしてくれ!」
ほら、言わんこっちゃない。
「オラ、にいちゃんの男らしさに心の底から憧れたんだ!にいちゃん!オラを男にしてくれ!!」
「いや、僕全然男らしくなんてないし──」
「お願いだよ!にいちゃん!」
「わ、分かった!分かったから!」
懇願する小学生5年生が土下座しようとしたタイミングで、僕は仕方なく康生くんを弟子にすることを約束してしまうのだった。
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