第180話 せめて一言だけでも

ネットランチャー

それは、ロケットランチャーの爆発物の代わりに、人を捕らえるためのネットが出てくるものだと考えて貰えれば想像できると思います。


そんな、日常生活とは縁もゆかりも無い謎の小道具によって、私たちは今拘束されていました。


「じっちゃ!

オラ、ついに賽銭ドロボウ捕まえた!!」


私たちの目の前に立つ、小学生くらいの少年は携帯で『じっちゃ』と呼ばれている人に私たちを捕まえた事を伝えると、今度は私たちの方にやってきました。


「お前ら!もう逃げられんからな!」


少年の明確な敵意のある睨みに、私は怯える事しかできません。


ちなみに浜辺くんはというと……


「むり……おばけ……むり…むり………」


赤ちゃんみたいに私の胸に飛び込んで来た後からずっとこの調子です。


私は浜辺くんの頭を膝の上に置いて撫でていると、先程の少年と一緒に60代くらいのおじいちゃんがやってきました。


そんな私たちを見た少年は……


「ちっ!こいつら捕まったのに呑気にイチャイチャしやがってる……!」


頭を撫でるくらいでは、

イチャイチャにならないのでは……?


私が、そんな今は関係ないことを疑問に思っていると今度はおじいちゃんの方が話しかけてきました。


「お前ら、なんでこげなことしたとか?」


「………」


(こ、答えたいのに声がっ……)


何もしてません。お参りをしようとしただけです。

そんな一言も言えない私が嫌になってしまいます。


「なんでこげんことしたか、きいとったい」


何も答えない私達に、おじいちゃんはより口調を強くして私たちを責めるようにもう一度いいます。


「っ………」


(せめて一言だけでも!

やってませんの一言だけでも……!)


普段通りに、浜辺くんと喋る時みたいにすれば良いだけなのに声が出てきてくれません。


「まったく……

泣くなら最初っからせんどけばよかとに……」


気づけば、大粒の涙か沢山零れ落ちていました。


そして……


「ひゃっ、な、何!?

またおば……って、星宮さん?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る