第175話 暇を持て余して

「なんというか……」


「うん、美雪の言いたいこと、分かるよ……」


私と、マーちゃんの見ている先にいるのは、1年生の時のクラスメイトにして、最近では学年屈指の人気を集めている眠り姫こと浜辺くんだ。


今日は日傘と水着を装備したサマーバージョンになっている。


さっきまでは、私たちのビーチバレーの審判をしていてくれていたのだけれど、ついさっきココナッツと葉柚さんが突然「どちらがバドミントンが上手いのか」で、バレーコートを使って勝負を初めてしまったのだ。


そうして、眠り姫ちゃんは暇を持て余したので、波打ち際でちょこんと海水に触れては指を引っ込めるという謎の作業を繰り返している。


今は星宮ちゃんが審判をやってくれていて、私たちもこうして暇を持て余していたところなのだ。


「どう見ても、女の子なんだよねぇ……」


「「はぁ……」」


ちょうど、マーちゃんとため息が重なりお互いに顔を見合わせて苦笑い。どうやら考えていることは同じみたいだった。


『どう考えても、眠り姫ちゃん(葉幸)の方が女子力というか、女の子らしさが私たちより高いんじゃ!?』


そう、これは自称オシャレな女子の私としては、とてもとてもプライドが傷つけられることだ。何せ、可愛いとは言え男の子に負けるのだから。


「ちょ、ちょっと美雪!あれ……」


そんなことを考えていると、突然マーちゃんが先程と違った緊張した声で私の肩をとんとんと叩き、眠り姫ちゃんの方を指さした。


「何──って、え!?」


私はついつい、周りの目も気にせずに割と大きめな声を上げてしまった。


でも、それは仕方ないことだと思う。


だって──



そこには紛れもなく、複数の男たちに言い寄られる男の子の姿があったのだから……

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