第174話 ひと思いに
「ひゃんっ」
「えっと、大丈夫?」
「は、はい。続けてください……」
心夏は「はふぅ……」と深呼吸をして心を落ち着かせると「どんとこいです!」と言って塗るように促してきた。
いや、僕の心の準備がまだ……
それに、日焼け止めを人に塗ってあげるなんてことはもちろんしたことが無いために勝手がわからない。
「どうしたんですか?
さぁ、ひと思いにやっちゃってください!」
「日焼け止めってひと思いに塗るようなものかな…?」
とは言いつつも、言いたいことは何となく分かるし心夏もきっと早く遊びたくてうずうずしているだろう。
あまり時間はかけられない。
「それじゃあ失礼します……」
僕は少し震える手で、心夏の背中に優しく触れると、そこから伸ばすように日焼け止めを塗り広げていく。
「あぅっ……んっ………」
なんというか、とてもいけないことをしている気分になっているのだけれど、僕は法を犯していないだろうか?
いや、例え法を犯していなくても、心夏というアイドル的な存在に直に肌同士を触れ合わせるのは、法が許しても学内の男子が許してくれない。
(心夏の肌、柔らかいな……)
とても綺麗で、触り心地も凄くいい。
そして、なによりも主張の激しい大きな胸は、現在日焼け止めを塗っている関係上解放されており、気を抜けばそっちに目がいってしまいそうになる。
「葉幸くん、手が止まっていますよ?」
「──っ!ご、ごめん」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
優しく微笑むもはや天使と言っても差支えのないレベルなのが恐ろしい。
(ダメだ……
集中出来ないし、なにか別のことを考えながら……)
そう思いながら、何となく隣を見てみると、そこには心夏同様に美雪さんから日焼け止めをぬって貰っている姉さんがいた。
(姉さんは、平和だなぁ……)
なんというか、うん。何がとは言わないけど小さくて、心が落ち着くよね。
その後は、心夏で心を乱される度に姉さんで心を落ち着かせることを繰り返すことで、なんとかこの日焼け止め塗り合いっこイベントを無事に終えることができた
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