第169話 映画

夏休み2日目。


僕は1人、ショッピングモールにやってきていた。


「あっついなぁ……」


姉さんから貰った日傘を閉じて中に入ると、ぶわーっと冷たい空気が僕の体を包んだ。


「あ〜

一生ここにいたい……」


そんなことを入口から少し進んだところで呟いていると、突然後ろから肩をとんとんと叩かれた。


振り返ってみると……


「やっほ〜眠り姫ちゃん!」


「私もいるよ〜」


そこに居たのは2人の女子──小堂おとうさんと早見はやみさんだった。


1年生の時の同じクラスで、三学期くらいから昼休みに眠っている僕の(おきてたけど)顔を見ようとしたり、眠っている僕に(おきてたけど)話しかけてきていたあの2人だ。


「眠り姫ちゃんはどうしたの?」


「映画を見にきただけ。

見て、ご飯食べたら帰ろうかなって」


「へぇ〜…。

ちなみに、なんの映画を見るご予定で?」


「えっと、バットニャンかな」


バットニャンとは、簡単に説明すると、ネコミミのついた真っ黒なスーツをきたヒーローが悪い人達をボコボコにする映画、らしい……


詳しいことは僕も知りません。


そんな僕の言葉を聞いた2人は驚いた様子でカバンから1枚の紙切れを出すと、僕にそれを見せてきた。


「私達も今日それ見に来たんだよね!

一緒に見ようよ、眠り姫ちゃん!」



久しぶりに1人静かな休日になると思いましたが、

どうやらそうはならないみたいですねぇ……


「そ、そうだね。

せっかくだしそうしよう」

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