第161話 怒り

火曜日のお昼休み。

私は、宝田さんに誘われて一緒にお昼ご飯を食べに来ていました。


「それで、昨日はどうしたんですか?

私、あんな折木さん初めて見ましたよ……」


久しぶりに話した元クラスメイトは、私を心配そうに見つめています。


「私は、てっきり貴方が1番だと思っていたんですけどね……」


「?」


1年生の時に同じクラスで、一際目立っていた宝田心夏という女の子は何においても秀でていた。


いつも人に囲まれていた彼女に直接「宝田さんが、このクラスの1番なの?」とは聞くことが出来ないでいたが、いつもの授業を受ける態度や、テスト前には色んな人に勉強を教えている姿を見ていれば自然と「あぁ、この子が1番なんだろうな」と思えた。


なのに……


「なんであんなやつが……」


実際に私の上にいたのは、あの浜辺葉幸という男だったのだ。


浜辺葉幸は見ていた限り、いつも寝ていた。

それこそ、授業時であってもだ。


そんな人間に負けていたと思うと、心底腹立たしく思えて仕方がない。


「あんなやつって葉幸くんの事ですよね…?」


その瞬間、宝田さんの纏う空気がガラッと変わったことに気づいた時にはもう遅かった。


「何があったかは知りません。

でも、葉幸くんを「あんなやつ」というのはどうなんでしょうか?」


「え…?」


「昨日聞きましたが、あなたと葉幸くんは初対面だったそうじゃないですか。

そんな貴方が、どうして「あんなやつ」なんて低評価をつけるような言い方ができるんですか?」


「でも!あいつは、1年の時からだっていつも寝てばっかりで、勉強なんて真面目にやってなかったじゃない!そんなやつに頑張ってきた勉強で負けるなんてそんなのおかしいでしょ!」


「本当に、そうおもっているんですか?」


「それは……」


宝田さんは、見透かしたような目で私を見た後、ため息を1つつくと「それでは」といって食堂から出ていってしまうのだった。

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