第160話 1番じゃないと
私──折木衣梨にとって、勉強は唯一自分が1番になれるものだった。
『凄いね衣梨ちゃん!』
『さすがだね!』
『今度勉強教えてよ!』
中学の時は、常にテストでは学年トップ。周りのみんなからは頼られる事が多かった。
──でも、それが変わったのは高校生になってからだった。
高校に入学してから初めての定期テスト。私は普段以上に勉強してテストに臨み、納得のいく高得点を叩き出した。
しかし、テスト用紙を受け取る時に、先生にこう言われたのだ。
『折木はクラス内2位だったぞ。
よく頑張ったな。』
それは、先生も単純に、褒めるために言った言葉だと言うのは自分でも分かっていた。
でも、それを聞いた私は1ミリも喜ぶことはしなかった。自分が1番じゃないと気がすまない。勉強だけは、何としてでも1番になりたいから。
そうして、普段以上の勉強をして臨んだ一学期の期末テスト、二学期の中間テスト、期末テスト。そのいずれもが2位だったのだ。
私は、先生に何度も何度も質問した。自分よりも高い点数を取り続けている人が誰なのか。
別に私は、その人をどうこうしようと言うことは考えていたわけじゃない。ただ、その人がどんな勉強の仕方をしているのかが単純に気になっただけだった。
でも、先生からの答えはいつも「答えられない」だ。
しかし、その人物が誰かという事はその日突然分かったのだ。
それは1週間後に夏休みを控えた金曜日の放課後。
気になって見に行った学年掲示板に、その明確な答えと言える名前は張り出されてあったのだ。
──2位 浜辺葉幸、と
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