第156話 歌いたいけど

「点数で勝負しませんか?」


「点数で……?」


「いいねいいね!」


カラオケ中、マーさんの発言から突如はじまった点数勝負に僕は内心焦っていた。


──どうしようどうしようどうしよう!!!


悲しいことに、僕はカラオケに来たのが初めてだ。

そのため、僕はまだ1曲も歌えないまま女子のノリに合わせて何となくタンバリンを叩く仕事をしていた。


「葉幸くんもいいですよね?」


「あぁ……うん」


「よし!決まりですね!

誰から歌いますか?」


もちろん、歌いたくないわけじゃない。

むしろ歌いたいくらいだし、嫌ならそもそもこの場に僕は来ていない。


(なんというか、時間が経つほど歌いにくくなるみたいな……?)


さっきまで歌ってなかったのに、突然「僕も1曲入れていいかな?」なんて言ったら「え?この子も歌うの?」みたいな感じで思われたらどうしようと思ってしまう。いやもちろんそんなことを思う人達じゃないっていうのは重々承知なんだけどね。


「──かぁーっ!なんか微妙!」


と、知らぬ間に1人目の美雪さんが歌い終わっていた。目の前のテレビ画面には85点と表示されているものの、それが凄いかどうかはさっぱりわからない。


「よし!次は私の番ですね!」


次はマーさんの番のようだ。


マーさんはさっきから聞いてた感じ、凄く上手かったし優勝候補筆頭なんだろうと思う。


そして、少し待っているとマーさんの選んだ曲が流れ始めた……

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