第151話 誘惑

──10ターン目・心夏のターン


「私はここで、この1ゾロダイスを使います!」


心夏は、そう声高らかに宣言した。

1ゾロダイスとはその名の通り出目が1しか無いダイスのことだ。


「でも、今使うと1マスしか使えなくなるよ?」


「それでいいんです!」


心夏は、自分のコマを1マスだけ進める。


そのマスの効果は……


「誘惑マス……?」


そのマスには『誘惑マス:プレイヤーを指定して任意の方法で誘惑する。指定したプレイヤーが誘惑に対して少しでも反応してしまった場合、そのプレイヤーは一つだけ、誘惑したプレイヤーの言うことを聞く』と書かれてある。


「もちろん、葉幸くんを誘惑します」


「え、僕?」


心夏は無言で僕の前までやってくると、顔を近づけてくる。


(なんか、こんなに近いとこの前のこと……)


思い出すとドキドキしてきてしまう。

頭の中が真っ白になっていく中、心夏は更に顔を近づけてきて……


「葉幸くん。好きです、結婚してください」


「はい…?」


え、今結婚って?僕と心夏が?

いや、心夏はどちらかと言うとすごいいい人で好きか好きじゃないかなら好きだけど……


「ふふっ。誘惑成功ですね♪」


「あ……」


「それでは、私の言うことをひとつ聞いてもらいますね?」


イタズラっ子な笑みを浮かべる心夏は、とても楽しそうだ。


「それでは、お願いです……

私の葉幸くんになってください!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る