第116話 信用できる

「心夏ちゃんっ」


「ひゃっ…。葉柚さん、驚かさないでくださいよぉ」


放課後、靴箱を出たところで葉柚さんが後ろから抱きついてきました。


「葉柚さん、生徒会の仕事は今日ないんですか?」


「ん〜?あるけど、その前にちょっと心夏ちゃんに用があって会いに来たんだよね!」


「用、ですか…?」


ピアノの練習のことでしょうか…?

それともそれ以外…?


「うん、はいこれ」


葉柚さんは私の手に何かを持たせると、「それじゃあまたね〜」といって校舎の方に戻っていきました。


「大丈夫?姉さんに変なことされてない?」


「大丈夫ですよ。ですが、こんなものをもらいました」


葉幸くんの前で手を開いて見ると、猫ちゃんのストラップ付きの鍵がありました。


「あー……。それ家の鍵だよ。

多分、これからはピアノの練習とかで宝田もうちを出入りすることが多くなるからくれたんだと思う」


「確かにそうですけど……いいんですかね?」


葉幸くんの家のピアノがある部屋は完全防音ですし、練習に最適と言えますが……


「姉さんがくれたんだしいいと思う。

僕も宝田なら信用できるし」


「そ、そうですか……」


──葉幸くんって、たまにこういうことサラッといいますよね!良くないと思います!

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