第102話 充実感
球技大会1日目、バドミントンが行われている体育館の空気は混沌としていました。
その理由というのは……
「っ!」
私の全力のスマッシュは体育館の床めがけて一直線に飛んでいきます。
しかし──
「あまーい!そんなのじゃ師匠は越えられないぞ!」
美雪ちゃんはそれをなんなく返して次の攻撃にすぐに備えます。
「葉幸くん、お願いします!」
「ん……」
私がギリギリ間に合いそうに無いところに飛んで行ったシャトルの落下地点には、既に葉幸くんが待機していてます。
葉幸くんの返したシャトルは葉柚さんのちょうど頭上に飛んでいき……
「お姉ちゃんの威厳を見せつけてあげ……る!!!!」
葉柚さんのスマッシュはラインギリギリの場所を鋭く襲います。
「姉さんに威厳は…ない!」
珍しく葉幸くんは大きな声(と言っても、普通の人が普通に喋るくらいの声量)で喋りながらなんとか葉柚さんのスマッシュを返します。
しかし、葉柚さんの攻撃は止まりません。
「そんなこという子には漫画買ってあげない…ぞ!!」
「僕が勝ったら買ってもら、う!」
「勝つのは、私たち!!!」
3度目のスマッシュで葉幸くんは追いつききれなくなりシャトルが床をコロコロと転がっていきます。
試合がはじまってから数分間、ずっとこの調子です。
現状は6ー8と、少し私たちが負けています。
試合を見ている皆さんも葉幸くんと葉柚さんの会話は聞こえているようで、時には笑いが、時にはどよめきが体育館内ではうまれています。
──とは言え、元気な葉幸くんを見るのも新鮮な感じがしていいですね。
「よーし!試合はまだこれからだよ〜!」
葉柚さんの元気な声が体育館いっぱいに響きます。
私はこんな状況に、何故か充実感を感じながらラケットを構え直すのでした。
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