第103話 鍵

※球技大会本番より、少し前のお話です。



放課後、1年までは教室に残って6時頃を見計らって帰っていたのだが最近は早めに帰るようになっていた。


その理由は合鍵の存在だ。


1年生までは持たされていなかったのだが、2年生になってついに手に入れたのだ。


鍵を持っていなかったのは、姉さんが「さちくんが家に1人でいると私が帰ってきた時にはもう漫画に夢中で構って貰えなくなるかもしれないから!」

なんて言って、学校の図書室で仕事が終わるまで待っているように言われていたからだ。


とは言え、早く帰れるようなったらなったで、最近は宝田や留学生の人なんかと一緒に帰ることも多くなってしまっているのだが……


ただ、今日はそんな最近の日々とは少し違って1人帰るように言われている。


留学生の人は「部活動の見学に行ってきます!」と言って、宝田は「用事があるので!」と言って、それぞれ先に帰っていったのだ。


そんな僕は今現在……


「眠り姫様!今日は1人なんですよね!?」


「私たちと一緒に遊びませんか?」


「カラオケに行こうと思ってるんですけど!」


見て分かる通り、女子3人に包囲されていた。

最近はよくある事で、宝田から聞いた話によるとみんなからはゆるキャラのような立ち位置に僕のことは思われているらしい。


「いや、僕用事があって……」


「用事!?先客がいたってこと?」


「そんなぁ」


「まさか、男友達!?」


と、落胆する2人と謎に興奮する女子が1人……

ここは適当に頷いておいた方がいいかな。


コクリ


「男友達なんですね!もしや、2人で!?」


2人で、かぁ……。

人が多いのは好きじゃないし2人とか3人くらいがちょうどいいよね。


コクリ


「そ、そんな……!!

これはもう!浜辺くんのような男の子が男友達と2人っきりということは……間違いない!」


そう叫んだ女子の1人はパタリと倒れて動かなくなってしまう。もう何が何だか分からない。


「え、何が間違いないの?というか大丈夫?」


「いや、気にしなくていいよ……」


「いつもの事だから……」


しかし、僕の反応とは反対に女子2人はかなり冷静で、倒れた女子を連れて教室から出ていくのだった。

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