第96話 粉々

パシュッ!


葉幸くんのスマッシュがちょうど星梨さんと羽柿くんの間に落ちてシャトルはそのまま後ろに勢いよく転がっていきます。


「……」


星梨さんは無言でシャトルを拾ってそのまま私たちの方に投げましたが、それはネットを超えることなく羽柿くんの前に落ちてきてしまいます。


「ごめんね、宝田さん」


ネット近くに立っていた羽柿くんは拾ったシャトルを私ながら謝ってきました。


「いえ、いいんです。

それより羽柿くんは大丈夫なんですか?」


「うん、僕は大丈夫。

もっとも、彩里あやりのプライドは粉々みたいだけどこればっかりはかな」


そう言って、羽柿くんは元の位置に戻ってラケットを構え直しました。



私のサーブから始まったラリーはもうほとんど星梨さんが動くことがなくなってしまい、2対1の一方的なものになっていました。


一方で葉幸くんも、1試合目と2試合目と同じように私をカバーするスタイルに変更したようでした。


しばらくラリーが続きはしますが、羽柿くんが追いつききれなくなりシャトルは地面に落ちてしまいます。


「いいよ……」


そんな時、覇気のない声で小さく呟いたのは星梨さんでした。

声援も聞こえなくなってなってしまった体育館の中でその声は私の耳にもしっかりと聞こえてきました。


「健人、もう降参しよ…?」

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