第84話 早く倒して

お昼ご飯を食べ終えてから1時間。

ゾンビのゲームを再開した私たちは遂にラスボスの部屋の前にやって来ていた。


「さち、大丈夫?」


「う、うん。多分……」


「じゃあ行くよ──」


そして扉を開けて、ラスボスが画面上にドアップで表示されたその時……


「やっぱむりぃぃぃぃぃぃ!!!!」


「何こいつきもっ!!!」


プツン


勢いでテレビの電源を切ってしまった。


──だってしょうがなくない?引くほどキモかったよ?ほんとに生理的に無理ってレベルだったよ?


いや、今はそんなことより……


「むり……むり……むり……むり…」


葉柚さんの言っていた通り、さちは余程怖かったのか私の膝に飛びついてきて今もくっついたままブツブツと何か言っている。


「うーん……。思ってたのとは違ったけど、まぁこれはこれで子猫?みたいで可愛いしいいかな?」


「むり……。姉さん、早く倒して……」


あれ?私を葉柚さんと勘違いしてる……?


「さち〜?

私、お姉ちゃんじゃなくて簪ひよりですよー?」


「ひよ…り……?」


さちは私の膝から上目遣いに私を見てくる。


「そうそう!ひよりだよ。ひーよーり」


「ひより…さん?」


──さちが私を名前で……!


「よし!任せて!ひよりさんがさちのために、あのキモイのボッコボコにしてあげるから!」

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