第34話 計画の始まり

葉柚さんとの作戦実行日になった土曜日。

私は浜辺家の門前に時間通りに到着しました。


先程インターホンを押したところ、葉柚さんが「ちょっとまってて〜!まだ時間かかりそう!」と言っていたのでまだ少し暇になるかもしれません。


私はその間に「作戦」とは別に自分の中で立ててきた「計画」の内容を再確認します。


5分後……


ガチャ


「ほらほら!人待たせてるんだから早く早く!」


「は?人待たせてる?聞いてないよ姉さ──」


「いいからいいから!」


「ちょっ…!…って、宝田?」


中から出てきた浜辺くんは驚いた顔をしています。それもそのはずです。だって浜辺くんは今日、2というふうに聞いていたはずですから。

葉柚さんが言うには、浜辺くんは基本外には出たがらないらしいのですが、葉柚さんが誘った場合には渋々と言った感じではありますが一緒に出かけたりしてくれているようです。


まぁ葉柚さんは「私が誘った時っていうか、さちくんを誘う人が私しかいないだけなんだけどね〜」といっていましたが……


「おはようございます、浜辺くん」


「お、おはよう…」


「おっはよ〜心夏ちゃん!」


「おはようございます、葉柚さん」


「じゃあ僕は帰るから後は2人で楽しんで──」


浜辺くんは私がいたのが気に食わなかったのか、背を向けて帰ろうとします。


「あれ〜いいのかな?帰っちゃって。ここで帰ったら後悔すると思うんだけどなぁ〜」


葉柚さんがもったいぶるように言います。

その言い方が気に食わなかったのか、浜辺くんは振り返って葉柚さんを睨みつけます。


「何?」


「いやさ?今日さちくんの読んでるマンガの新刊の発売日だったな〜って思うんだけど違ったかな?」


「そうだけど……」


「せっかく、給料日前で金欠のさちくんに優しいお姉ちゃんがそのマンガ買ってあげようと思ったのに、残念だな〜、なんてね?」


これが葉柚さんの考えた作戦第1段階、『もので釣る作戦!』なのだそうです。

でも、本当にこんなことで浜辺くんは来てくれるのでしょうか…?


「分かった。行くよ……」


「やったー!いえーい心夏ちゃーん!」


葉柚さんと勢いでハイタッチをしてしまいました。

でもなんだか楽しいですね……

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