第5話 疑い

「好きです!付き合ってください!」


これでこの学校に来てから300人目。

何度も同じ人から告白されていたりすることもあってそれ以上の回数の告白を受けた私の心は、今日も変わることはなく──


「ごめんなさい」


しかし、それを聞いた目の前の彼はそれほど傷ついた様子が見られません。


「やっぱり、好きな人がいるからなのかな?」


「はい、そうです」


最近の告白してくる生徒の何人かは好きな人がいることを知った上で告白してきているようで、またその中の何人かがこの質問をしてくることがあります。

私はその質問に対しても、いつもと変わらない同じ答えを口にします。


──しかし、今回は今までの人とは少し違いました


「それってこの学校の人なんだよね?宝田さんからは告白しないの?」


この学校の人、というのは私が前に口にしてしまったことから広がってしまったことなのでしょう。以前告白してきた方が「せめて一つだけ!好きな人って言うのはこの学校にいるの?」と聞かれた時に私がよく考えずに「はい、ちゃんと居ますよ」と答えてしまったことがありました。


「そんな勇気はありません……

それに、告白するより私はその人に告白されたいと思っているんです」


これも何度かされた質問でした。なので、前答えたのと同じように答えます。しかし、次の質問に私はドキリとさせられてしまいます。


「でも、僕の周りの男子は宝田さんに告白してないって人いなかったよ?ほんとに好きな人なんているのかな?僕には嘘のように思えるんだけど」


「別に全員から告白されているわけではありません。私は、ずっと私の好きな人からの告白を待っているつもりです」


その言葉を聞いた彼は、つまらなそうな顔をした後に荷物を持って私に背中を向けました。


「そっか…。じゃあもういいや。さよなら、宝田さん」


私は、そう言って去っていく男子生徒の背中を見ながら大きな危機感を感じるのでした

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