第4話 好きな人がいるので

「おい聞いたか!?宝田のやつ、昨日は5人から告られたらしいぞ?」


「まじかよ!?それでどうだったんだ?」


「それが、全員ダメだったらしい!」


「まじかよ!」


「告白した奴らの中の何人かは理由まで聞いたらしいんだが「好きな人がいるので」って言われたらしいぞ!」


「まじか!?ほんとにいるのか!?」


「もしかしたら俺かも……」


「それはないだろ!」


「「あはははははっ!」」


昼休み、今日も今日とて教室は恋愛の話で満ちている。満ちている、といってもあの2人の声がデカすぎて2人だけで満たしているんだけどね……


それでも、さすがに僕の近くにいる人ともなるとその声は普通に聞こえてくる。


「眠り姫、今日も寝てるね……」


「うん、ぐっすり熟睡だよね」


「もしかしたら寝たフリしてるだけだったり?」


「それはないでしょー!」


「あははっ。それもそうだよね!」


それがそうなんだよね、なんて僕は言えない。

というかこの女子2人はよくも飽きずに毎日ここにくるよな……


あ、もしかして席が近いだけとか?


「眠り姫はどんな顔してるのかな〜?」


「意外とイケメンだったりして!」


意外ってなんだよ意外って!失礼な人達だなぁ


まぁ、イケメンなどというリア充的人種とは程遠い存在なんだけどね……


「あ、ちょっと私トイレいきたいな。一緒いこ?」


「うん!もうちょっとで昼休み終わっちゃうし急ご!」


そんな会話の後、2人は僕の席の前からいなくなった。女子高生に留まらず、女子中学生や女子小学生にまで広く見られる、1人でトイレに行けない現象を今まさに観測した。



──今日も助かったみたいだな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る