第2話 眠り姫

「おい聞いたか!また宝田が男子を振ったって話!」


「聞いた聞いた!今度は3年のサッカー部のエースらしいな!」


「たしかすげぇイケメンだったよな!?なんで付き合わねーんだろうな?俺たちが女なら好きじゃなくてもとりあえず付き合うのによぉ!」


昼休みも残り少なくなってくる頃、学食に行った生徒達や弁当を食べ終えた生徒たちが教室に戻ってきて一気に騒がしくなる時間帯に僕、浜辺葉幸はまべはさちは静かに目を覚ました。姿勢はうつ伏せのまま、聞こえてくる声に耳を傾ける。


「噂じゃ好きな人がいるって話だぜ!」


「マジかよ!でも宝田に告白した男子ってもうこの学校じゃ100は超えてるよな!」


「100なんて話じゃない!毎日誰かが振られた話が入ってくるくらいだぞ?200はいってるだろ!」


とてもくだらない事だとは思うが、高校生ともなれば恋愛の話には敏感な頃。そんな話をしたくなるのも仕方ないのだろう。

それはそれとして……


冬休み明けてもぐっすり眠ってるよね!」


眠り姫とは僕の事だ。入学以来ほとんど寝て過ごしていることからクラスの人達から知らない間にそう命名されていた。


僕、男子なんだけどなぁ……


「入学からずっとだよね〜」


「顔も見たことないよねー」


「確かに……。ねぇちょっと、眠り姫の顔見てみない?」


ちょっと〜?お二人さん聞こえてますよー?


「いいね!それじゃあ私が右肘をズラすからその隙に携帯で写真撮ってよ!」


「それじゃあ作戦実行しますか!」


だが、心配には足らない。何故ならその作戦は僕が手を下さずとも失敗に終わるのだから!


キーンコーンカーンコーン……


「よし、全員席につけー。授業はじめるぞ〜」


「ありゃ〜残念。席戻ろ?」


「あともうちょっとだったのになぁ」


完璧なタイミングでチャイムがなり目の前にいるであろう女子生徒達は席に戻っていくのだった。

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